幸せのカタチ

□第十九話
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 「テメー一年のくせに生意気なんだよっ!!」


 お決まりのような台詞が聞こえたと思うと痛い音がした。

 少し離れた場所から奥を覗き込む。

 こんな全国なんて晴れの舞台で騒ぎを起こしてる馬鹿は誰だと思って覗き込んだのに。


 「レギュラーから落とされたからって俺に因縁ふっかけんのやめてくれます先輩?」

 「なっなんだと!!」

 「てめーっ!」


 こんな所で何してんだ、このワカメは!!!!

 よりにも寄って何処の馬鹿が自分の学校のしかも知り合いだと言う衝撃に一瞬固まってしまった。

 全国で何してのこの子達!?馬鹿なの!?

 殴られたのだろう唇の傷に足が動いた。


 「調子に乗りやがって!!!」

 

 イライラした三年が切原を突き飛ばすと油断していた切原はよろける。

 余程今の攻撃が頭にきたのか切原は瞳を赤く染めて低く呟く。

 マズイっと思った。


 「ストーーーープっ!」

 「なっ!?」


 走って切原と三年の間に入って切原の握り締めた拳を上から握り締める。


 「落ち着きなさい切原君っ!」

 「離せっ!!コイツ等潰すっ!!」

 「馬鹿っ!そんなことしていいわけないでしょうか!」

 「離せよっ!」


 すっかり熱くなっている切原は中々落ち着かない。

 止めに入っている私の姿もたぶん目に入ってない。

 こんな時に誰かいてくれればいいけど、頼りになりそうな人間は周囲にはいない。

 否、むしろこんな所を誰かに見られる訳にはいかない。

 立海大が暴力事件に全国大会棄権なんて話はなかったし、あってはならない。

 だって、この大会は彼にとっては・・・・。

 そう思うと暴れる切原の腕を掴む手に力が入った。

 「赤也!しっかりしなさい!!」

 「!?」

 「私がわかる?」

 「・・・・・・あ・・・・・ふ、藤原・・・・先輩」

 「そう!今、君がココでやるべき事は何!?」

 「・・・・・試合」

 「わかってるなら・・・・我慢だよ、いい?」

 「ッ・・・・ッス」

 「よかった」


 怒りに頭に血が上っていた切原の瞳に漸く私が映った。

 暴れるのをやめて大人しなる。

 瞳の色も戻り切原も落ち着いたのを見て安心して気を抜いた瞬間。


 「おい、邪魔すんなよっ!」

 「きゃっ」
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