挨拶をしに行くと聞いて冷や汗をかいてガクブル状態の私に、セイラさんは聖女のごとく微笑んだ。
ちょっとだけ和んだ気がする。
「大丈夫大丈夫。ザンザスは見掛けほどこわくないよ」
『本当ですか?』
だけど頷いたセイラさんにほっとできたのは束の間だった。
「センパイあんまり適当なこと言っちゃ駄目ですよー。鳴さん、言っておきますけどボスはおこりんぼですからー。怒らせたらあの世にまっしぐら確定なので気を付けた方がいいと思いますー」
「しししっ、まさに泣く子も黙るって感じ?むしろ泣く子は更に泣きわめく?」
よくわかった。
セイラさんの言うことはあてにならない!
「ええ?ザンザス結構優しいよ」
私には、ぼそりとベルさんがお前にはなと言ったのがばっちり聞こえた。
セイラさん限定じゃあ私には無効だろう。
「そんなことばっか言ってたってしょうがないじゃん。行かなきゃ鳴がここで過ごせないし…ほら早く行こう」
『うぅ…わかりました…』
引き摺られるようにして邸の奥へ連れていかれた。
なぜか警察官に連行される罪人のような気分だった。