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□11日目
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現れたのは予想に反して鳴だった。
鳴は俺を見るなり、大きく目を見開いた。
それから俺に駆け寄るなり勢いよく抱きついてきたのだ。

「な、なんだぁ!?」

混乱している俺を他所に抱きついたまま俺を見上げると、鳴は今までにないくらい嬉しそうに頬を赤らめて微笑んだ。

「…!」
『迎えにきてくれたんですね!』

言ってることの意味はわからないが嬉しそうに瞳を輝かせる鳴に思わず目をそらす。
か、かわいいじゃねぇかぁ!!!
不意討ちは卑怯だろぉ!!

『来てくれて嬉しいです』
「…?」
『ありがとうございますツナさん』

……ツナさん?
…沢田綱吉?
今までに鳴が言っていたことの意味がようやく理解できた。
鳴は俺に話してるんじゃない。
あいつに、だ。
鳴にはあいつが見えてるのか。

「……おいフラン、いるんだろ」
「…さすがにバレちゃいましたねー」

フランは颯爽と現れるなりかけていたであろう幻覚をといた。
鳴には急に人が入れ替わったように見えたようで驚きに目を見開いて俺を見上げる。

『え…あれ…?』
「鳴騙されんなぁ…今のは幻覚だ」
『幻覚…?あ、フランさん…そっか…』
「鳴さん幻覚見たことないってこの間ゲームした時に言ってたじゃないですかー。だからちょっと驚かせようとイタズラしてみましたー」
『わぉ初幻覚体験ー……ってあれ?つまりツナさんじゃなくてスクアーロさんだった…んですよね…』
「そうですよー」
『うあああああすみませんんんん!スクアーロさんに抱きついたりしちゃって!』

鳴は真っ赤になると頭を下げて逃げ去ってしまった。
わざわざ追うつもりもなかった俺は眉根を寄せてフランを睨み付ける。
諸悪の根元はこいつだ。
「そんな怖い顔しないでくださいよー。…ミーのおかげで自覚できたんでしょー?感謝してくださいーニブチン隊長ー」
「…っ、お前…」
「せいぜいがんばってくださいねー」

さっさと退散したフランを見送らずに舌打ちして自室に入った。
ソファに身を投げ出して天井を睨み付ける。
確かにかわいいと思った。
あんな笑顔を俺に向けてくれたら、汚れた世界に生きてる俺も安らげる、と。
けれど、それと同時にいつもあんなふうに鳴に笑顔を向けられるあいつを羨ましいとも思ってしまった。
ああ情けねぇ。
自分のことなのに周りより自覚が遅いってなんだ。
自嘲しながら大きく溜め息をついた。






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