星に集うものたち [ニ]
□君影草 編
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北風の吹き荒ぶ、あの虚構の地で知ったのは、世のすべて。歪みのすべて。己という存在のすべて。
この紫微を宿し、神邸に入った――神冠ではなく、鼎として。
その歪みを正すために、俺は今ここにいる。いや……むしろその為だけに生まれて、死ぬのだ。
使命を果たさぬ限り何ひとつ自由にならず、何も感じる事ができない。愛し、憎み、哀しみ、憂い、そして誰かを愛し……心を震わせる事も。それはもはや、生きていないのと同じ事。
けれど、凍り付いたように波一つ立つ事のないこの胸に、一筋の風が吹いた事を。こんな自分にも、美しいものを感じられた瞬間が確かにあった事を、俺は忘れない。
それは、春風。
刹那でも、人としての温かさと哀しみに出会えた事を。その笑顔に出会えた事を、俺は生涯忘れない。それだけで、また俺は闘える。
シャクナ。それを教えてくれたのは……いつもお前だった。
だから俺は、迷わない。
なんとしても、神子として。この世界にただ一人の神冠紫苑として、この歪みを終わらせる。
その為に生きて、そして……終わろう。
俺は決して、迷わない。