□背中合わせの別路
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「―――ルシウスっ」
 背後から名を呼ばれ、しかしルシウスは歩く足を止めなかった。聞こえないふりをする。
「ルシウス、ルシウスルシウス!!!」
「…………っ、」
 騒がしい。そんなに立て続けに名を呼ばれては、騒がしくてならない。
「何か僕に用か、ウィーズリー!」
 振り返ると声の主はルシウスに近寄って口を開いた。
「ルシウス、今度は誰をたぶらかすつもりだ」
「人聞きの悪いことを言ってくれるな。僕が、一体今までに誰をたぶらかしたと?」
 唸るように睨みつけてくるアーサーに冷笑を見せて問い返すと、彼はきりりと眉根を寄せた。
「そう言って、毎年毎年一年生を闇の魔術への道に落としているだろう」
「闇の、とは心外な。僕は彼らに己の身を守る術を教えているのだ」
 冷笑をたたえた唇でそういい、ルシウスはふと腕を組んで目を細めた。
「そういえば、君の寮にシリウスが行ったな」
「あいつに手を出す気か」
「それから、ジェームズポッター。彼らは気が合いそうだな。二人して我が寮を睨んでいたよ」
 ルシウスは再び足を踏み出した。隣にアーサーが並ぶ。互いを見ようともせずに話ながら、同じ歩幅、同じ速度で歩く二人は、―――各々が獅子寮、蛇寮の監督生ということもあり、―――すれちがう生徒の目を引いた。
「我が寮といえば、ひとり、恐ろしく陰鬱な瞳をしたやつがいたな。―――確か、セブルス・スネイプとか言ったか……」
 微笑を浮かべるルシウスに、アーサーはぴたりとその場に立ち止まった。
「一年生はお前の実験台じゃないぞ」
「そうだろう。僕も彼らを実験台などと思ってはいない」
 ルシウスはアーサーから数歩離れたところで足をとめ、くつくつと肩を揺らした。アーサーの声は尚続く。






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