□永遠に
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「そう……セブルスの喪主はあの子が、」
 密やかな夜闇に、ナルシッサの声が響く。身体を寝台に横たえたルシウスは、薄く開けた目で天井を睨みつけてうなずいた。嘆息ともつかぬ声が漏れる。
「私たちも必ず来て欲しい、と言われたよ」
「……いい子ね」
 ナルシッサは淡く笑む。其れからどこか躊躇するように、あのね、と言いさした。
「今から言うことは、私の寝言だと思って聞き流して欲しいのけれど」
「何だい。言ってご覧、シシー」
 僅かに身体を妻に向けたルシウスは、彼女の髪をもてあそぶ。細く長いそれは、絹糸のようだ。
「私ね、ほんとうを言うとセブルスには此方側に来て欲しくなかった」
「……それは、」
「不器用だけれど、本当は優しい子だったもの。苦しまないはずがないでしょう」
 ルシウスは答えず、僅か目を伏せた。構わず、ナルシッサは続ける。
「それと……ねぇ、覚えているでしょう。彼が大切にしていた娘を、」
「リリー・ポッター、か」
「エヴァンズよ。―――リリー・エヴァンズ」
「同じじゃないか、」
「違うわ。彼が愛したのは、生涯でリリー・エヴァンズただ一人だもの」
 ナルシッサはそう言い切る。その意図が分からないルシウスではなかったから、黙って頷いて先を促した。
「私、あの二人が幸せになればいいって思っていた。リリーはグリフィンドールだったけれど、そんなこと関係ないって思っていたわ―――どうしてか分かる?」
「……どうしてだい?」
「セブルスが、とても嬉しそうに笑っていたからよ。―――彼女といる時だけ。……ポッターは、何もかも持っていたわ。でも、セブルスは違っていた。だから、」
 ナルシッサの声が震える。彼女の瞳から溢れた滴は、頬を伝ってぱたぱたと枕を濡らした。
「ほんとうに不器用なひとね。彼には、エヴァンズしか見えていなかったもの。哀しいくらい、一途に想い続けて、」
「シシー」

 ルシウスが滴を指で掬うと、彼女は少しだけ笑う。
「セブルスは今頃、リリーに逢えているかしら……―――ねぇ、」
 ナルシッサの言葉に、ルシウスは小さく頷いた。
「勿論さ。―――そうでなくてはならないよ」
 それはナルシッサへ、そして己れへの気休めの言葉でしかなかったかもしれない。―――だが、「そう」あってほしいと願う気持ちは、互いに真実に違いない。
「貴方が言うのだから、きっとそうね」

 ナルシッサが小さく微笑む。その言葉に、救われた思いがした。









   永 遠 に

 君の幸せを、願っている。








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セブを帝王に引き合わせたのはたぶんせんぱいだと思う。リリーと仲が良いのをあまり快くは思っていなかったけれど、セブルスが幸せそうな表情を見せるからまあいいかとか思ってたら可愛い。









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