士道

□雪の降る頃
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「この雪、積もるかなぁ」
無理矢理庭先に歳三を連れてきた惣次郎は、はらりはらりと舞う雪を見つめながら呟いた。
「積もらねぇだろ。初雪は積もらねぇって言うし」
両手に息を吐きかけながら言うと、平助が感心したように歳三を見た。「土方さんは何でも知ってるんだなぁ」
「……んなこたァねぇよ」
「あ、トシさん照れてる」
「るせぇソージ。口の中に雪詰めるぞ」
「初雪は積もりませーん」

きゃっきゃと笑いながら逃げる惣次郎に、歳三は苦々しく舌打ちをした。
彼が口を開く度に漏れる吐息ほども白い頬が赤く色付いているのは、寒さの為か或いは。
「畜生、ソージのやつ……へっくし!」
意外に可愛らしいくしゃみに、平助は笑いながら歳三を見上げた。
「大丈夫ですか?」
「あー寒ィ。俺ァ寒いのは駄目なんだ」
言いながらいそいそと部屋に戻る。その背について歩きながら、平助は肩をすくめた。
「んじゃあ土方さんは奥州や蝦夷には行けないっすね」
「死んでも行くか」
言い、歳三はまたくしゃみをした。







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