□存在理由
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「…………んー、………」
 海野は息苦しさを覚えて目を覚ました。胸から腹にかけて何やら物が乗っているようだ。
「…………こすけぇ、重い………」
 目を閉じたまま言うが、ソレが動く気配はない。海野は仕方なさそうに目を開ける。そして目に飛込んできたその人物に、いやおうなく頭が冴えた。
「……………の、ぶしげさま!?」
「……………ん………。あァ、起きたか、六」
 信繁は眠そうな声で微笑む。海野は思わず苦笑して信繁の体を起こした。
「信繁様が、なぜ私の上で寝ていらっしゃっていたのです?」
「いくら呼んでも姿を現さないから、探しにきたのだ。珍しいな、お前がうたた寝とは。全然起きる気配もなかったし」
「それは失礼いたしました。…………夢を、見ていたんです」
海野は肩をすくめて見せる。信繁がきょとんと首をかしげた。
「夢か? どんな?」
「あなた様と、初めてお会いしたときの」
「ずいぶん懐かしいな。………六、あの時わたしのこと見くびっていたろう?」
 悪戯っ子のように笑う主君。海野は苦笑した。
「滅相もない」
「嘘をつくな。わたしは六のことは全てお見通しだぞ」
 そう言い、信繁は忠実な右腕の鼻の頭に指をつきつけた。
「それはそれは。恐ろしい方ですね、あなた様は」
「そうだろうとも。私はお前の主だからな」
「えぇ。一生、ついていきますよ。信繁様」
海野が微笑むと、信繁はなんだ今更、と首をかしげた。
「夢のせいですかねぇ」







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