宝物
□天気雨
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天気雨
セブルスは時計の針を見て、今の時間がまだ日中であることに気づいた。
黄昏どきのような薄闇に囲まれて、カーテンが閉じられた大きな広間の空気はそよとも動かない。
四方を高い書架に囲まれた図書室で、セブルスは幼い頃から本を手に取っていた。初めはそこにあるたいがいの書物が、セブルスにも難しかった。書棚の本を読みすすめ、年齢を重ねるにつれ、闇の魔術について書かれていることが理解できるようになってきた。
両親が闇の魔術へ傾倒し、ヴォルデモートへ忠心を捧げているのも、日頃の言動にあらわれていることだった。
それが正しいとか、悪だとか、考えたことはない。倫理なんて教わらなかったし、知りたいとも思わない。
ただ、セブルスは闇の魔術について卓越した知識と才能を備えていた。
セブルスは、本を日焼けさせるなという神経質な親の忠告をかたく守り、図書室の暗闇を守っていた。
ここ数日少しだけその約束を破り、カーテンの隙間から庭の池を見つめていた。
こっそり開け放した窓から湿気を乗せた風と、白い太陽の光、かすかな虫や動物の鳴き声が耳に伝わる。
この外に小雨が降っているのだろう。
雨が降るなら土砂降りになればいい。光が射していながら雨が降るなんて、居心地がわるい。そう思っていた。
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