□心ひとつ
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心ひとつ


「いってぇー……」
目が覚めるとそこは、見慣れない場所だった。消毒薬臭い、ベッドのある部屋。恐らく、医務室だろう。
「……まずったなぁー」
シリウスは溜め息をついて体を起こした。
ジェームズと一緒に、禁書の棚にある呪文を試していた。いくつかは成功したのだが、失敗した呪文が逸れてシリウスに当たってしまったのだ。
ここまで連れてきてくれたのはジェームズだろうか? 彼の姿はない。授業に行っているのだろう。
「……はぁー」
シリウスは再び溜め息をついて倒れこんだ。全身が痛いし、だるい。体を起こしているのも辛かった。


「………て……やめ…、て…っ」
あえぐような声に、シリウスは目を開けた。また眠っていたらしかった。
「……やめ……父さ……っ……!!」
声はシリウスの隣のベッドから聞こえてくる。カーテンがかかっていて誰かはわからないし、体を起こせないので確かめることもできない。
「大丈夫ですよ、大丈夫。あなたのお父さんはここにはいません」
マダム・ポンフリーのあやすような声がした。シリウスは目だけそちらに向ける。荒い息が聞こえてきた。その辛そうな響きに、シリウスも心配になる。
「……ぁ……マダム……?」
「ここはホグワーツです。あなたのお父さんはいません。……大丈夫ですか?」
「……はい……。すみません、平気です」
声は、憔悴しきったように答えた。
「少しお眠りなさい」
「………はい」
優しく言ったマダムに、声は素直に答えた。





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