士道

□陽炎
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「知ってるか、鉄?」
京都来の隊士は、よくこの部屋に集まってくる。少し前――それこそ、彼らが京都にいた頃――には考えられなかったことだ。この部屋の主は、泣く子も黙る新選組鬼副長である。
島田がすいかを持って部屋に来ると、その後に従いて続々と隊士がやってきた。歳三は始めこそ渋い顔をしていたが、そのうち誰より美味そうにすいかを食べ始めた。小姓の鉄之助が横に来たとき、歳三はニヤリと笑ってそう聞いたのだ。
「何スか、副長?」
鉄之助はすいかを種ごと飲み込んで聞く。
歳三は『バラガキ』の表情で答えた。
「すいかの種を飲み込むとな、あとでへそから芽が出てくるんだぜ」





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