□あなたの幸せだけを祈らせて
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 軽やかな羽音が持ってきたのは、宛名のない手紙。


Let me pray
  For only your
    Happiness――,



 毎年この日には、普段に増してより多くのふくろう便が彼女のもとに届く。飾りたてられた言葉で書かれたカード、ふくろうがふらつくほどの大きな荷物は、開けるのが億劫になるほど過剰な包装が施されている。そんなひとつひとつに目を通し、彼女―――ナルシッサ・ブラックは、また新しい年を重ねたことを、嬉しく思うのだ。
 カードやプレゼントの数々は、ナルシッサが食堂のテーブルに着いた途端、否、それ以前から先を争うように届いている。その中にあって、朝食ももう終わろうという頃やってきたふくろうは、彼女の肩に着陸して、小さな紙片をくちばしから落とした。ナルシッサは、美しく生え揃った羽をなでながら、二つ折りにしただけの紙を開く。

『昼休み 中庭』

 差出人のない手紙には、簡潔にそれだけ綴られていた。けれどナルシッサには一目見ただけで差出人が誰か分かった。毎年同じ手紙がくるのだ。
 ナルシッサは手紙を元のように丁寧に折り畳むと、胸に押し当てて笑みをつくった。今から数時間を飛びこえて、早く昼休みになればいいのに。嬉しさで少し早くなる鼓動さえ、彼女にはじれったく感じられた。




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