□うたてし
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現パロ、死ネタ、(人によって)不快描写あり。何というか幸村さま好きは見ない方がいいかもしれない、な幸村と望月(と海野)




『所長』
 目頭を押さえていた手を離して振り返ると、望月が分厚いバインダーを片手に立っていた。相好を崩してやれば、僅かばかり眉をひそめたままで、分析結果が出ました、と言う。ああ、もうそんな時間か。頼んだのは、ついさっきじゃなかったかな。
 冗談めかして受け取ったバインダーに挟み込まれたプリントには小さな活字がびっしりと記されており、些か、嫌気がさした。昨夜から寝ずに被験体に向かい、その活字を綴った部下の手前言葉にするわけにもいかずに思うに止めたが。
 ―――被験体、006X。
 その名称を認め、望月には休みを取るように言う。彼は頷いたもののなかなか部屋を出ていこうとはせずに立ち尽くしていた。何か言うべき言葉を選んでいるようだった。
『どうした、六郎』
 あまり口が達者ではない部下への助け舟のつもりだった。望月にとっても躊躇いを取り払う役割を十分に果たしたに違いない。椅子に腰掛けた私に目の高さを合わせるように跪いて、彼はもう一度、所長、と私を呼んだ。
『少しお休みになった方がよいのでは? お顔の色が優れません』
『そうだな……もうすこし、したらな。もう少しで、私の研究が完成する』
 研究、の言葉に望月の表情は瞬間、迷いを孕んだようだった。何度も見た表情だ―――そう、この研究所の者全てが浮かべる、表情。
『……言いたいことがあるなら、遠慮なく言ってもいいんだぞ』
 微笑んだ。今度は助け舟などではない。
『―――し、失礼を承知で申しあげます。このような研究をし続けていて、貴方の名が地に墜ちるようなことはないのでしょうか』
『地に墜ちる? ―――お前は面白いことを言う。何故、そうなると?』
『人の模倣は法で禁じられております……万が一、外部に漏れるようなことがあれば』
『ふふ、心配性だな、六郎。漏れることはない―――お前たちは私を裏切らない。そうだろう?』
『無論です。ですがこのようなことを……あいつは、望んでいるのでしょうか、』
 眉根を寄せてあえぐように言う彼の銀髪を指先で遊ばせる。肌が白い彼にはよく似合った色の頭髪だ。
『六が、どうして望まぬと言えるのだ。すべて私がプログラムするのだから、それは六の模造ではない。六自身が蘇るのだぞ?』
『幸村さん……、』
 望月は痛ましげな顔をして目を伏せる。実験の段階では、何一つ問題は無かった。そして、大切な盟友が、この世に再び生を受ける―――どうして、皆それを、喜ばぬのだろう。私は九人の部下達の思考が、その点で解せなかった。
『さあ、六郎。少し休むといい。すごい隈だ』
 私の言葉に、望月の小さな溜め息が続く。―――まったく、何故喜ばない?

『―――なあ、ろく』
 戸が閉まる音を聞き届けて、私は卓上の写真立てに手を伸ばした。二つ折り式のそれの右側には研究所の皆で写った写真が、左側には私と彼とで写っている写真が入っている。―――これと同じ物を、小助が彼の柩の中に入れていた覚えがある。だから、あの男は私たちのことを忘れていまい。嘗ての約束を忘れずに―――恐らく、待っている。再びまみえる日を。

『ろく、忘れていまい。―――私の側を、離れないと』
『ろく、もうすぐまた、会える』
『ろく、次に会った時には、―――』
 涙は枯れるほど流したというのに、あの男のことを思うとすぐに堰が決壊するのは何故だろう。あと少しで、会えるというのに。

『―――何故私を置いて逝った、六』

 室内のモニターの動作音が、耳鳴りのように私の意識を犯し続けていた。











―――end





舞台としては生物科学研究所みたいなところ、幸村さまが所長で海野ちゃんともっちーが副所長、かな

海野ちゃんは何年か前に病気で星になった設定でどうでしょうか(何が)

所員たちは幸村さまが六のクローンをつくろうとしているのに疑問を感じているけど言えないかんじ、

でもきっと幸村さまも理屈では理解しようとしないけど、無意識的にすべてを悟りきっていればいいよね!←


最後に、なんだか倫理に悖るもの生成してごめんなさい。私の精神状態は至って良好です(笑)

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