闇の砂時計

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―そういや、ジャッポーネに来るの初めてだな


暖かな春の風が頬を掠める

この国の代名詞とも言える桜は花がもう散りかかっていて、生命力溢れた若葉が顔を出している

ここから彼女、もとい"私"の新たな一日が始まるのだ






『おぉー、ここがジャッポーネか。』



受け取った大きめのスーツケースを地面に下ろし、両腕を上にあげ大きく背伸びをした

自販機で買ったカフェオレを片手に、再びスーツケースをカラカラと引いて空港を後にする


最初は嫌々で引き受けた今回の件だが、意外に良かったかもと飛行機の中で思い直していた

マフィアのボスの補佐という16歳には似合わぬ職業柄、丸一日オフの日なんてそうそうあるものではない

そう思えばたまの気晴らしも必要かも知れない


イタリアで貰った今回の任務のデータを取り出す


"沢田綱吉"並盛中学2年

VARIAのボスを倒すぐらいだから一体どれ程の奴かと思えば、平凡なアジア人


………いや、ちょっと美形よりか


だが、薬中犯罪者を相手にするのと
じゃじゃ馬中坊の遊び相手になるなら明らか後者の方が楽だ

どちらにしろリボーン師匠が帰って来るまでの間

元々休暇を兼ねて受けた件だし、そんなにこの件には深入りするつもりもない

そうタクシーに乗りながらぼんやりと考えていた


「お客さん、外人さんかい?」

いきなりのタクシーの運転手の声にびくっとした

『まぁ………。』

「並盛なんて何もないだろ。
べっぴんさんは物好きだねー。」

『あぁ、ちょっとそこの人に用があってね。』


タクシーから降りればそこは完全に住宅街だった

日本での仮の住まいは警護対象者の隣の家

明らかに建売りの家には私の日本名である"雪沢"の表札がかけられていた

家に入るとすぐにベッドにスーツケースを投げ捨てる

その後、家の中を一回り見たが家族用の間取りは一人には大きすぎる

スーツケースを開けて変装セットを取り出す

外人のボディーガードなんて目立ち過ぎるから

まぁ、私の美しさは変装なんかじゃ隠しきれないだろうがな


手っ取り早く黒のカラコンと黒のウィッグを付けて
肌色のドーランを塗ったくる


元々祖母が日本人でクォーターだから私は日本顔

肌の色とか目の色を誤魔化せばもうイタリア人と思われる事はないだろう


その時、ベッドの上に開いていたパソコンに新着が入る

内容には日本のボンゴレに不安をかけないように、警護の事はバレないようにしろというお達しだった

京都から引っ越してきた設定ということで
空港に売ってた八ッ橋を持ってお隣さん家に

折角自分で食べようと思ってたのに




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