愛と憎
□6話
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トントントンッ
リズミカルに軽やかに響く音。
・・・何かと思った。
包丁の音だ。…お母さん?
いい香りもする。お味噌汁かなぁ。
なんだか長い間、寝てた気がする。
もう起きなきゃ…お母さん、怒っちゃう。
目を開けた。
見慣れない古びた天井。
頭がついていかなくて、何度かぱちぱちと瞬きをしてみる。
やっぱり、知らない天井だ。
ぐるりと首を動かしてみる。
年季の入った小屋、という感じの場所。
「起きたのかい?」
起き上がって声のほうを見る。
これまた知らないお婆さんが、巫女装束を着て、包丁片手にあたしを見ていて。
お婆さんと巫女装束と包丁・・・。
なんてシュールな組み合わせだろうか。
「・・・だれ?ここはどこ?」
それでも少しも警戒心を隠そうともせずに、お婆さんに問いかけた。