愛と憎

□2話
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勝負は一瞬だった。
結芽が斬りかかり、大蜘蛛が応戦した。
いや、しようとしたのだ。
しかしその体は、攻撃を仕掛ける前に真っ二つに斬られた。文字どおり、真っ二つに。
土蜘蛛は血しぶきをあげながら息絶えた。

結芽は刀に付いた血を振り払い、静かにしまう。そして土蜘蛛の亡骸に歩み寄り、膝をついて手を合わせ目をつむった。成仏のための呪文だろうか、ぶつぶつと何かを唱える。

「気高く偉大なる蜘蛛の妖よ、我、ここに敬意を持って祈りを捧げる。どうか迷わず成仏したまえ」

最後に結芽がそう言うと共に、土蜘蛛の体を光が包んだ。あまりの強い光に、慣れていても、つい目をつぶってしまう。
光がおさまると、そこにあったのは先程のまがまがしい妖怪ではなく、すっかり毒気を抜かれた小さな蜘蛛。

「もういいですよ」

結芽が描いた円の中で目を見張っていた由来のじぃじに向かって、結芽は微笑みを浮かべて言う。

驚いた、と言いながら近づいてくる神主に
「この蜘蛛を、塚を建て供養してあげてください。この後、この場所を清めると私の仕事はすべて終了となります」と言い、亡骸を丁寧に抱えあげる。
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