アイシールド21 短編

□小指の赤い糸を手繰り寄せて
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進くんが立ち去ったあとにはまだ瞳に涙の残る私と複雑な顔をしたヒル魔くんがいた

何を言うでも無く、向き合う


「………いいのか」


ぽつりと零した言葉は本当に小さくて何のことを言っているのかわからなかった


「…進を追いかけなくていいのか」

『あ…』


ヒル魔くんの冷たい目

そう、だよ

進くんは私がヒル魔くんを好きになっていたことに気付いてた

だから此処に残してくれたんだ

でも、ヒル魔くんは私のこと…ううん、きっと利用価値、なくなっちゃった、よね…?

だからこんなに怒ってるんだ


『ごめんなさい…ヒル魔くんの計画、だめにしちゃって』

「……」


無言でも怒ってても、嫌われてても…進くんから勇気を貰ったから私の気持ちだけでも伝えよう

じゃないともう進くんにも顔向けできないよ


『あのね「おい」…え?』


ぐっと眉間にシワを寄せたヒル魔くんは相変わらず怒っていて、ああもう告白すら出来ないんだ

手が震える

ヒル魔くんの前から逃げ出しちゃいたい


「おい」

『っ!!』


いつの間にか目の前にいたヒル魔くんの細い指が伸びる

思わず体がびくりと震える


「…………泣くな」

『っ』


優しい、優しい声
瞼を撫でる少しだけ冷たい指先


『ヒル魔くん…』

「…泣かせたいんじゃねェ
ただ、お前が、そばにいてくれたら

笑っていてくれたらそれで良かったんだ」

『え…?』

「なあ、真紅
進はいいのか?追いかけなくて」

『い、かない…』

「このまま此処にいたら悪魔に喰われちまうぞ?」


泣き笑いのような、見ているこっちが辛くなるような顔にまた涙が溢れそうになる


『…ヒル魔くんなら、いい』


ゆっくりと伸びてきた腕は優しく背中に回され、壊れものを扱うかのように優しく優しく引き寄せられた


「離してやれねェぞ?」

『…ヒル魔くんが飽きるまではそばにいさせて…』

「バカだな、お前」

『バカ、って…』


「一生飽きねェし、一生離さねェよ」



小指の赤い糸を手繰り寄せて




顔を見合わせて『すき』「好きだ」と言った



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