夏目友人帳 短編

□ただ純粋に「アイシテル」と言えたなら
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突然だが、私には嫌いで嫌いで嫌いで堪らない奴がいる

へらへらと愛想のいい笑みを浮かべて無駄に爽やかさを撒き散らすあの男


「きゃあー!今日も素敵!!」

「名取様あ!」


きゃーきゃーきゃーきゃー、毎度よくやるもんだな


売り出し中の俳優で売れっ子

甘いマスクと柔らかな口調が人気の秘訣、だとかどーとか

そして、その人気に比例するかのようにスキャンダルも多数


遊ばれた女は数知れず、悔し涙を流した男も数知れず


遊び人


それが名取周一という男のレッテルだ


「なんでそんなに嫌うかなあ?
格好いいじゃん、名取さん」

『私の前でその男の名前を出さないで』

「…はーい」


そして、私、霧雨夜長は同じく今売り出し中のモデル

今話題のお二人!…なあんて企画であの男と共演した番組も数知れず


そのたびにあの男が女とキスをしているのを見た

しかも毎回別の女

…とんだプレイボーイだこと、最初の印象はそれだけだった


けれどあの男は私の友人、つまりモデル仲間にも手を出し始めた


勿論何股もかけているのがバレるのは時間の問題で友人達は皆一様に塞ぎ込んでしまう時もあった


そんな友人達を見ているからこそ、女を弄ぶあの男が大嫌いなのだ




 
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