ONE PIECE 短編

□掴めない左手
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『…………好き、』


抱き締め合ったまま、今まで一度だって口にしなかった言葉を呟いた


「……俺も、好きだよい」


丁度真上にある彼の顔を見る

ふわりと優しく微笑んでいて、どうしようもなく泣きたくなった



『き、らい…嫌い、っ嫌い!!
マルコなんか大っ嫌い…っ』


彼の言葉は優しいけれど、時に残酷だ

相手がいるくせに、この人は平気で私に愛の言葉を囁く


それが堪らなく嬉しい私もどうかしてる


「嫌い≠ネんて…言うなよい、」

『さわら、ない、で…っ!
嫌い!マルコなんか嫌い!大っきら「好きだ」…っ』

「好きだ…、好きなんだよい!
嫌いだなんて…言うな……

…お前に、嫌われたくないよぃ…」


『どうして…どうしてそんなことを言うの…?

マルコには、奥さんがいるじゃない……』


――‥罪悪感


ただそれだけが胸を占める

恋をしてはいけない人に恋をして、愛してはいけない人を愛した

いけないことだと分かっているのに心が、思いが止まらなかった


そう思っていたのは私だけでしょう?

貴方からしてみればただのお遊びだったのでしょう?

一時の気の迷いでしょ?


『優しくなんてしないで…
嘘の言葉なんて、望んでない』


「…俺は、お前の言葉の方が信じられないよい」

『え…?』

「年だって一回り以上も違う

スリルを楽しんでいるだけなんだろうな、って何度も思ったよい

正直、遊ばれていると思ってた」

『そんなこと…!』

「でも、」


離れていた隙間を埋めるようにキツく、キツく抱き締められる


「……それでも、俺は不知火を愛してるよい…」

「遊びだろうが何だろうが、不知火を愛してるんだ

…この気持ちに嘘はつけないよい」

『っふ、う…マ、ルコ…っ』

「…本当にお前は泣き虫だよい」


マルコの優しい言葉達が傷だらけの心を癒やすように染み渡っていく


『奥さんと…っ別れて欲しいなんて思ってない、から…っ!

今、だけの関係、っていうのもわかってるから…!

だから、っ
あと少しだけでいいから…っ』



そばにいさせて=d――



未来が見えなくても、

待っているのは終わりだとしても、



今だけは、貴方を愛してもいいですか?








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