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□揺れる心は花片のように脆く
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私の心は､もう｡
揺れる心は花片のように脆く
桜の花びらたち2008PVの台本に目を通した時｡
胸が張り裂けそうだった｡
何故ならそれは今の自分に余りにも似過ぎていたから｡
いつからだろう｡
彼女の視線を感じるようになったのは｡
いつからだろう｡
彼女の想いに気付いてしまったのは｡
彼女が私より少しだけ小さなメンバーといるときも､さりげなく視線を送られる｡
大好きだと常に豪語しているメンバーに一目散に抱き付けば､冷たいような視線を感じてそちらに振り向けば目を逸らされる｡
それに嫉妬の意味が含まれている事に気付いたのはいつだっただろう｡
自分が大好きと公言するメンバーに対する気持ちと｡
彼女が自分に寄せる気持ちは、多分違う｡
それは自分の勘違いだと思った｡
そうであって欲しいと思った｡
だから､彼女の気持ちに気付かないふりをした｡
なのに｡
それなのに、それを演じるだなんて｡
皮肉すぎて笑えてくる｡
たかみな､小嶋さん､あっちゃん､私の仕事終わりの移動バスの車内｡
たかみなや小嶋さんの隣に座る選択肢があったはずなのに､先に座っていたあっちゃんの隣に座る。
確かめようと思った｡
彼女の気持ちを｡
向き合おうと思った｡
彼女の気持ちに｡
だから桜の台本を読み合おうと提案した｡
うん､と返事をした彼女の声は掠れていたような気がした。
｢切ねぇーっ!!｣
合わせているときのあっちゃんの緊張感がこっちまで伝わってきて､それが妙に気まずくておちゃらけてみる｡
だよね、と小さく苦笑で返してきた彼女の表情は暗くてよく見えなかった。
台詞合わせをする度､あっちゃんは寂しそうな表情をする｡
それはきっと自身でも気付いていないぐらい微かな事だけど｡
自惚れじゃない｡
そう思ったとき､彼女の想いから､逃げる事はやめていた｡
｢あっちゃんはさぁ､私の事が好きなんだよねぇ｣
笑い過ごしてくるだろうと僅かな期待は､返ってきた戸惑いの声に掻き消された｡
明らかな動揺が手にとるようにわかる｡
その気持ちが冗談で笑い飛ばせない程深いなんて｡
そんな事私自身が一番わかっているくせに。
｢…この､ね｣
この期に及んで核心からはぐらかす私は臆病者かもしれない｡
そう自嘲めいた微笑を浮かべて台本に､とん､と優しく指を置いてみた｡
そういう役だからとあっちゃんは笑顔を作る。
それは心なしぎこちない｡
そんな笑顔をさせてしまう私が歯痒くて｡
これ以上そんな寂しい笑顔を見れない｡
そういう意味で台本を閉じて窓越しに流れる夜の街を見る｡
隣であっちゃんが目を閉じたのがわかる｡
この想いに応えなければならない｡
でもどう応えればいいかわからない｡
私の気持ちは､どうなんだろう｡
窓に映るそれすらわからない自分に溜息が出る｡
だから､せめて､私の気持ちがわかるまで待っていて欲しいと望むのはわがままなのだろうか｡
｢切ねぇ｣
無意識に口に出てしまった本心は車内に大きく響いたような気がした｡
やっぱり私はまだ､逃げている｡