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□眠り姫に愛を込めて
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甘やかしてあげる




番組収録の休憩中。
メンバーは思い思いの事をする。
優子はひな壇で隣の小嶋と談笑中。
すると、太腿に重みを感じて優子は目をやる。
そこには、今にも眠りにつきそうな前田の横顔があった。

確か前田は別のメンバーとスタジオを出ていったはずだと優子は記憶を巡らしてみる。
それをわざわざ定位置に来て自分の膝枕で寝ようとするなんて。
ああ、なんて可愛い。


「あっちゃん?眠いの?」
乱れた髪を手櫛で梳いてやる。
そうしたら完全に睡眠体勢に入っているであろう前田からは、んーと寝ぼけた返事が。
そんなとこですらかわいいと思ってしまう自分は、きっと彼女にハマっている。
「…安心する…」
ボソッと呟いた前田は、直後にすぅすぅともう夢の中。
恐らく無意識であろうその一言は優子の心臓を鷲掴みにした。

「優子もこんぐらいあっちゃんに甘えてあげればいいのにねぇ」
そう前田の頭を撫でながら小嶋は優子に苦笑してみせた。
ま、出来ないんだろうけどと加えて。
「あー…」
と困ったように優子は唸る。
自分を理解してくれる人がいるってありがたい。
小嶋の最後の一言に少しだけ気後れする。

前田は寂しいときや、悩んでいるとき、メンバーに猫のように擦り寄ってただ傍にいる。
それはある種の甘えなんだと優子は思う。
ずっとセンターとして、そしてエースとしてのプレッシャーを抱える前田には心の寄り処が必要で。


そして。
その一番の寄り処が、いつでも自分であって欲しいと望むのは、我侭な乙女心と笑って欲しい。


そうして、こんなあまのじゃくな自分を好きでいてくれる彼女に、たまには甘えてみようかと考える。
彼女ぐらい構ってもらいたい人間に構って欲しいと行動で表すのは、自分には難しい事かもしれないけれど。


だから。
しばらく構ってあげられてなかったから。
今日は存分に甘やかしてあげよう。
そう決めて、隣の小嶋に聞こえないように、だけど夢の中の前田に届くように。


おやすみ。あっちゃん
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