SS

□雲と野良猫
1ページ/7ページ

この爪が、この声を裂いてしまわぬように





雲と野良猫


およそ喧嘩と呼ばれるものには自分は全て勝ってきた。
1対1だろうと、1対多数だろうと、自分は負けたことがない。
どんなに強い相手だろうと自分は勝ってきた。
そして、地面に頬を擦り付けて戦意を失くした相手を見るのが好きだった。
それは相手が強ければ強い程、その優越感は増す。
自惚れじゃなく、ましてや過信なんかじゃない。

喧嘩でしか自分を見出だせなくて。
喧嘩こそ自分が唯一誇れるもので。

そんな自分を何故か慕う連中がいる。
気付いたときにはギャルサーを作れる程になっていた。
どいつもこいつも気性が荒い奴らばっかで、そのくせ仲間がやられたらボロボロになっても礼だけはしっかり返す妙に律儀な奴らばっかで。
おかげで勢力は一番。
気付けば“野良猫の巣”と恐れられて、何処のギャルサーも手を出してくることはなくなっていた。

そして。
荒れ果てた悪名高いマジ女に入学。
ここには、最強と謳われる武闘派戦闘集団の吹奏楽部、通称“ラッパッパ”が存在する。
最終的な目的はそこのトップを潰す事。
それは必然的にこの学園のテッペンの座に立つ事にもなる。
だが、そんなものには自分は興味なんて毛頭ない。
適当な奴を捕まえてそいつをそこに座らせればいい。
その後にそいつがラッパッパの連中にどうされようとどうでもいい事だ。
自分の強さが証明できればそれでいい。

だから、乗り込んできた矢場久根30人を、たった一人で返り討ちにした自分と同学年の奴を教室から見て。
その強さに震え、戦ってみたいと思った。


それ以降、名のある連中を悉とく潰していった。
グループのリーダーにタイマンを挑んで這いつくばる姿を笑っていく。
大概の舎弟は敵討ちだと躍起になるが、大低のリーダーはそれを抑える。
上に立つ者がタイマンという決闘で負けて下の者に討ってもらう。
屈辱この上ない。
そんな事もわからないチームは、自分が率いるチームで、それこそ刃向かう意思も生まれてこない程に完膚無きまでに叩き潰していった。


そして、あらかた潰し終えた頃。


マジ女が騒然となった出来事が起こった。

ラッパッパがたった一人に潰された。
そんな嘘のような噂が学園内を一気に駆け回った。



腐ってもマジ女最強戦闘集団。
それをたった一人で潰しただと?
ありえねぇ。


だが、そう疑わしげな自分とは別に。
いずれ自分がそうするつもりだったのだとその機を待っていた自分がいた事に気付く。

そして、自分を出し抜いた奴の名前を耳にした。

大島優子。

確かそう聞いた。
矢場久根30人が地に伏しているだけの姿の中、一人返り血を浴びて笑っていたあいつらしい。


あいつが。



現ラッパッパ部長、大島優子。

そいつを倒す。
そう心に誓った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ