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□似た者同士
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私達は、そうして曖昧に繰り返す








「あーー!私が食べようとしてたのにーー!!」
最後の一個の焼肉弁当。
それをAKBのリボン担当こと高橋みなみが手に取ったのを見て、優子は声を上げる。
その声が自分に向けられているんだろうと感じて高橋が、え?と振り向いたすぐそこにはむくれる優子の顔が。
「私狙ってたのにー!」
優子は頬を膨らませて高橋に詰め寄る。
いやいやいや、先に取ったのは私だし譲ってもいいけどやっぱり今の気分は肉がいいし。
「取ったもん勝ちなんだよ〜優子〜」
へへんと笑う高橋に、それはもう風船が入ってるのかと調べてみたいぐらいに優子の両頬が更に膨れ上がる。
くそーたかみなめ、そりゃトイレに行ってた私も悪いんだけどーっ。

「中華弁当にしなさい優子さん」
ビシっと指差して優子に高橋は薦める。
ほらこれ、と優子の前に突き出す。

「やだ!肉の気分なんだもん私!」
優子と同じ事思ってたのかと妙なシンクロに高橋は何故だか気恥ずかしく感じたり。

「知らないよそんな事!」

「この前あっちゃんには譲ってたくせに!」
たかみなのケチー!
ふんと鼻を鳴らす優子に高橋はそういえばそんな事もしたなーと呑気に記憶を辿る。
いやまあだってあっちゃん可愛いし。
ついつい構ってあげたくなるし。
高橋はぼんやり考える。


でも優子は、何故か最近自分に突っ掛かってくる。
そんな優子に自分も何故か絡んでいっている。

以前、たかみなと優子って似てるよねー何となく、と小嶋にざっくりした感じで言われ。
隣の峯岸にうんうんと頷かれた。
その時は、はぁ!?と二人して声がハモったから、ほらーとクスクス笑われた。


確かに最近二人は似てるという声がよく耳に入るがそんなに似てるだろうかと高橋は首を傾げる。
せいぜい身長ぐらいじゃないのかと思うが。


「あの時はあの時!今は今じゃん!」
あー大体優子が相手だといつもこうなるんだと高橋は溜息を吐きたくなる。

素直にはいどうぞと渡してあげればいいのに、優子相手だとどうもうまくいかない。
他のメンバーからは優しいだとか頼りになるだとかしっかりしてるだとかこれでも結構慕われてるのに。
だけど、子供みたいに駄々をこねる優子はとても年上には思えなくて、結果そんな優子にムキになってしまう。


しばらく二人が火花を散らし合ってると、それぞれの頭に手を置かれ、続いて髪をくしゃくしゃにされた。
「ちょっと麻里ちゃん何すんのさ!」
優子の駄々が事を見兼ねた篠田に飛ぶ。

「優子とみなみがそうしてると子供の喧嘩みたいでなんかかわいいんだよね〜」
ケラケラと篠田は笑う。
「そんなんじゃないもん!」
「そうですよ!」

ほらーといつしかの小嶋と同じ反応をする。


むぅーと二人して膨れっ面になるから篠田はやっぱりかわいいなーと満足気。
ほぼ同じ身長で小さいし、顔も最近似てるし、元気だし。
優子は最近高橋に突っ掛かっていくし高橋もそんな優子の相手してるし。
でもこの二人はそんなことも気付かないでいるんだろうなと、ちっちゃい二人を見てそんな事を思う。

ああ、やっぱり子供じゃんと小さく笑う。


「わかった。じゃあ二人で焼肉弁当分け合えばいいんじゃない?」
我ながら名案だと頷く篠田。
「「げっ」」
二人同時に嫌そうな声を出してお互いの顔を見れば自然に漏れる溜息。

さすがにそれはないと若干引き気味の優子と、また優子の駄々に付き合ってしまったとうなだれる高橋。

「…私…中華弁当にする…」
テンションが急に下がった優子はとぼとぼと余っている中華弁当を手にする。
あーまたたかみなに絡んでしまったと優子は少々反省気味。
なんでか最近たかみなに自分から絡んでいってしまう。
理由はわからないけど。


先に座ってもぐもぐと口を動かす高橋の隣に座る。
「…おいしい?」
羨ましそうに味の感想を聞く優子に高橋は、ん、と焼肉を口へ運ぶ。

んあ、と優子は口を開けてそれを受け入れる。
「んまーいっ!」
と笑顔で咀嚼する優子に高橋は苦笑する。
さっきの言い合いムードは何処へ。
今度はビリビリと包んでいたビニールを雑に破り、エビチリを高橋の口へ。
「んまい!」
これまた笑顔で高橋は咀嚼。


その光景を面白そうに篠田、小嶋、峯岸は同じ結論を下した。



喧嘩する程仲が良い。
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