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□届かぬ想いは密やかに
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あなたのその心に、私はどれだけ映っているんだろう









「優ちゃんちっちゃいね〜」


「いやいやたかみなの方がちっちゃいから」


二人で背比べしながら笑い合う。

あなたをそう呼ぶのは私だけだと思っていたのに。
たかみながその呼び方を使った事に、胸が酷く締め付けられた。


私はいつだってあなたを見ているのに。
あなたのその大きな瞳に映すのは私じゃない事ぐらいわかっている。


あなたが好きな人を知っていた。
あなたを好きな人を知ってしまった。


それは、あなたに想いを寄せてなんていなければ決して気付きもしなかったこと。


「ねぇあっちゃん!たかみなの方がちっちゃいじゃんねっ!?」


あなたの口から私の名前が飛び出す。
それだけで胸が高鳴り、そして今にも張り裂けそうで。


「目線は同じようなもんじゃ〜ん」

「うるさい男リボンっっ!!!」

「なにーっ!?セクハラおやじっ!!」

いつか誰かが二人を双子のようだと笑っていた。

冗談じみたその表現は私の心に徐々に傷を付けていった。
何度も目の前で繰り広げられるじゃれ合いに、その傷は確実に深くなっていった。



「優…子」


優ちゃん。
いつもは意識もせずに口に出来る呼び名も、咽の奥で詰まって声にすらさせてくれない。


「ん?なに?あっちゃん」


「何でも…ないよ…」



言えない。
あなたの名前を呼ぶ理由なんて。

私の名前を呼んで欲しくて、一瞬でもいいからその視界を独り占めしたいからなんて。



「じゃじゃーん!!ワンピース!!」

「あーっ!!私読むーっ!たかみな貸してーっ!!!」


二人で並んで読む姿は認めたくないけれど、ホントに双子のようで。

でも、二人はお互いに想い合っている事を知っているのはきっと私ぐらい。

いつも、くだらない喧嘩にもならないような事で始まる言い合いは、まるで猫がじゃれついているようで。
そのすぐ後には二人して大きな笑い声。


悔しいけれど、私が入り込む隙間なんて少しもない。



だけど。

それでも。


いつの日か、あなたがこの名前を最初に呼んでくれたらいいと願う私を。
どうか許して。
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