セラムン小説


□長編〜旅行篇
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今度、二人で旅行に行きませんか。

ある日の放課後、帰り道の途中で大気がこう切り出した。
隣を歩いていた亜美は思わず息を飲む。
付き合い始めて数ヶ月経つのに二人の関係は未だ変わらずピュアなものだった。
 
嫌いな訳じゃないの。ただ、少し怖いだけ…

やや俯き加減に歩く亜美を横目に大気はすこし不安になった。
まだ高校生だし、焦る必要もないが自分だって男である。
興味だってある。当然だ。
ましては好きな人といつも一緒にいるのに全く手も出せないというのも酷な話だ。
とは言え、今まで紳士的に振る舞ってきたせいでいまさら攻めて怖がらせてもいけないし・・・
あと、単純に彼女自慢をしてくる星野と夜天がうざい。
同じ家に住んでいて一緒に仕事をしているのだから仕方ないといえば仕方ないが毎日そんなことを聞かされては気が滅入る。

それに彼女である亜美以上に愛野さんと顔をあわせているように思う。なんか癪だ。
夜天も愛野さんもお互い芸能人だから外を頻繁に出歩けないのは解る。
だからって毎日部屋に来ることはないだろう。
それも全部友人や身内にも付き合いを隠している自分たちがいけないのだけれど。
いつかはばれるしばれて困るものでもないけど、あえて言うほどの事でもないしマスコミに知られたら面倒だ。
マスコミへの報告は事が終わってからでいい。

それに亜美はフルートをはじめて何回かみちるさんのコンサートで披露させてもらっている。
まだあまり有名ではないがプロフィール非公開の新人奏者としてメディアが注目していた。
ここでスキャンダルなんてことが起きたらマスコミの集中は亜美にいくだろう。
それだけは何とか避けたい。

様々な障害と壁にぶち当たり、二人の関係はちっとも進まないまま今を迎えていた。
それでも、週に何回か勉強と称しこうしてふたりで出かけることは何事にもかえれない至福の時間だった。
あの頃に比べたら・・・そう、二人が離れなければならなかったあの数ヶ月に比べればどんなにいま幸せか。
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