セラムン小説


□大気さんの秘密
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「あ、月野さん、このプリントなんですが星野に渡していただけますか?」

「夜天なら、屋上にいきましたよ?愛野さん迎えにお願いします。」

「亜美さんお待たせしました。」

大気さんはいつも名前を呼ぶとき、苗字にさん付けで呼ぶ。
あたしだけは名前に。亜美ちゃんだけ特別なんだねってみんなは言うけれど。
本当の大気さんは私しか知らない…。



大気さんの秘密


放課後いつものように一緒に帰ると、いつものように部屋に誘われる。
そしてまた、いつものように…。

「亜美、ここきてください。」

手招きされておずおずと近づくとぐいっと引き寄せられる。
気がつくと大気さんのひざの上。

「亜美の指定席はここだっておしえたでしょう?」

大気さんは部屋にいるときだけ『亜美』と呼ぶ。
それは付き合ってからずっと。
私以外、誰も知らない。

「どうして部屋にいるときだけ呼び捨てなの?」

「どうしてだと思いますか?」

優しく囁くその声はまるで媚薬のよう。
とろんとした目でわからないと継げるとにっこり笑って答えてくれた。

「あなたが特別だからですよ。それに、他の人の前でそんな顔されたら困ります。」

その言葉に顔がいっそう赤くなる。ほらまた、と頭をなでてくれた。
そう。大気さんがこんなに優しいのを知ってるのも私だけ。
こんな風に笑うのを知ってるのも私だけ。
この手も温もりも、私だけ…。
私だけが知ってる大気さんの秘密。

私以外の女の子、呼び捨てになんてしちゃだめですからね。


END
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