セラムン小説


□Love Day(長編)
1ページ/2ページ

プロローグ

日本時間で深夜をまわった頃、世界的規模な流れ星が観測された。
肉眼ではっきりと見えるその光はオレンジに輝き連続して3つ地球に降り注いだという。
あまりの美しさにみるものは言葉を飲んだ。
学会では会議を開き、翌日の三面記事にはそれが載った。
しかし、その映像を捉えた者は誰もいない。



オレンジ色の閃光が銀河を切り裂き、青い星へと入ろうとしていた。
タリスマンを見つめ、みちるはクスリと微笑む。
隣に座っていたはるかは不思議そうに彼女を見つめた。
彼女はタリスマンを眺めてはいつも不敵に微笑む。そんな彼女も可愛いのだけれどなんだか知らない人みたいで少し寂しい。
タリスマンとは日本神話の三種の神器をモチーフにした鏡、剣、玉であり、彼女の持つ鏡は、未来、過去、現在を映し出す。その鏡にはさまざまなものが映し出されるというがみちる以外の者が見ても意味はないらしく他の鏡となんら違わない。違うといえば通常の鏡より少し重いくらいか。
珍しい鉱石で創られたその鏡は総重量2キロはある丈夫なつくりをしていて長時間持つにはさすがに疲れる。バイオリニストのみちるにどこにそんな力があるのか感心する。以前本人にきいたら怒って口を聞いてくれなかった。

じっとみつめているとみちると目が合った。彼女はにっこりと微笑むとコーヒーカップをキッチンに運びはるかに告げる。

「車、お願いできるかしら?」

もちろん!とキーを片手ににっこり笑った。目的地はどこ。今日はドライブ?
子供のようにはしゃいで仕度をするはるかにおもわずふきだす。

「いいえ、ちょっと・・・ね。」

耳元で用件を伝えるとはるかはちょっと複雑そうな顔をしていたけれど「OK。」とだけ答えて車にエンジンをかけに行く。そういう反応なのは予想してたけど、ほんとにはるかは彼が苦手らしい。


さあ、行きましょうか。彼らの元へ。また会えたお祝いと、少しの釘を刺しに。
不敵に笑うみちるを見てせつなはため息をはく。

(また、この人の悪い癖ですね。おせっかいなんだかなんなんだか。
でも、私もあの方にまだ話してないですね。
そろそろ、きちんといわなくちゃいけないのに。
私にも、彼女ほどの行動力があればいままで苦しまずにいられたのかもしれないですね。)

せつなはいつもみちるを羨ましくおもっていた。彼女は見かけよりもずっと芯が強くて自分というものを持っている。行動力もあり、ほしいと思えば何でも自力で掴み取る。そんな人だ。
いえばせつなとはまったくの正反対である。
おなじ家に暮らし、いつも見ているからこそそれがよくわかる。

はやくすべてを伝えてらくになりたい。でも伝えたら未来が変わるかも知れない。
それはある種の背徳感であった。彼女には伝える術などわからない。
未来を守り見届けるはずの自分が未来を大きく変えようとは今までもこれからもあってはならない事だと思ってきた。
それでも、みちるがはるかに恋したように。それぞれが想いを抱えているように。
せつなもある人に、恋をしていた。
許される恋ではなかった。前世でも、来世でも。
そして、現世でも、せつなは彼に恋をした。
――許されては、いけなかったのに。

「…銀河一身分違いの恋は、私のほうだわ」

ぼそりとつぶやいた言葉をみちるは聞き逃さなかった。
みちるはすべて理解していた。そして自分にはどうすることも出来ないことも。
だから、これから行く場所はせめてもの気休め。いや、偽善だってこともわかっている。
だけど幸せになってほしい。せつなには。
はるかを好きになった時点でみちるには社会的な幸せなど与えられないということはわかっていたことだから。

「いってくるわね。」

さあいこう。少しの幸せと、未来を掴みに。
それが正しいか間違っているかは今はまだわからないけれど。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ