セラムン小説


□雨の日の肖像
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窓の外はしきりに雨が降り注ぎ、それは私の心みたいだと思った。
深夜1時をすぎた頃、自室ではなくはるかのマンションのベットで外を眺める。
高級マンションの上階に位置するこの部屋からではぬかるんだ地面は見えないが、薄暗い空模様とピシャリと鳴り響く雷は心に孤独感と不安を植えつける。

最近では互いの用事がない日はここでコーヒーを飲みゆっくり過すのが当たり前になっていた。
半ば強引に押しかけている私にいやな顔一つせずに優しく迎えてくれる彼女がとても好き。
私ははるかの好意に甘えていた。
使命とか、世界とか、未来とか。見つめるものはたくさんあるのにそんなのはもうどうでもよかった。
私ははるかを愛している。はるかさえいてくれたら他にはなにもいらない。それはゆるぎない事実だった。

はるかは私にとって最初から特別だった。初めて興味を持った『人』、それがはるかだった。
物や音楽には惹かれることはあったけれど、私に人の温もりを与えてくれた初めての人。
出逢ったその日から、いいえ、前世から私はあなたの虜なのよ。誰よりも優雅で美しいあなたに惹かれない人はいないわ。たとえ同姓であっても。あなたは私の初恋なのよ。

隣で穏やかに眠る愛しい人を見つめ、みちるは微笑んだ。いまこうしてはるかの隣にいる。それだけであのときからは夢のような話。
みちるはそっとはるかの額にキスをする。
いつもこうして寝ているときにそっとキスをしていた。
この想いがはるかにばれて拒絶されたら…それがいちばん怖い。
いつかそうなってあなたの傍を離れることを考えたらそれだけで夜も眠れない。
いまもそう。不安で不安で仕方ない。
私は何より、あなたが大事なのよ。はるか…。
もっとも、あなたがいちばん大事なのは使命なんでしょうけれどね。

未来や使命、自分以外のことに一生懸命に頑張るあなたは素敵よ。だからタリスマンが宿っていたのね。私は、多分…この想い。それ以外に考えられないもの。同姓であるはるかに恋をして彼女に気づかれずこの想いを秘め続ける私はピュアに映ったのかしら。
はるかがもし男性だったら、今頃結ばれていた?

――はるか、愛してるわ

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