セラムン小説


□Love Day(長編)
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第1話 始まりの朝。


Episode1 別れ、再開、運命。〜ここから始まるすべての物語〜

「うさぎちゃん、うさぎちゃんってば!」

目覚ましの音と共に騒がしい声が頭上から降ってくる。
そこにはひとつの黒い影。
三日月禿の可愛い黒猫があきれた顔で名前を呼ぶ。


現在4月7日。午前7時28分。


「うー…ん。るなぁ?あと、5分…」

うさぎは布団の中で寝返りを打つ。
彼女はまだ夢心地のようだ。
ルナと呼ばれた猫は憤慨した。

「5分じゃないわよ!今日から新学期!!高校2年生でしょ?だめじゃない、もっとしっかりしなきゃ。星野君に嫌われるわよ!?」

あわてて飛び起きたうさぎは急いで時計を確認する。
どうみても待ち合わせの時間は過ぎていて、朝ご飯を食べる余裕なんて当たり前だがない。

「どぉして起こしてくれなかったのよぉ」

八つ当たり以外の何物でもない怒りをルナにぶつけたうさぎはフルスピードで着替えバタバタと家を出る。
そんな彼女を見送り、扉に向かってため息を吐いた。

「はぁ、うさぎちゃん、私はずっと前から起こしてたのよ?」

新学期が始まったいうのにうさぎは相変わらずだ。どこか抜けているというか、落ち着きがないというか。それでも以前と違う雰囲気にルナは心配を隠せない。
星野達3人が故郷キンモク星に戻った後、うさぎ達、内部の戦士は皆、憔悴しきっているようだった。中でもうさぎは特に酷くて、ご飯も喉を通らず日に日に痩せ細っていった。
彼氏である衛もこのことについて気をかけてはいたのだが、自分以外の男のことで悩み傷つく様子を目の当たりにしてはやっぱりおもしろくはない。
しかし、事の発端は留学で忙しく、ろくに連絡もしなかった衛が悪いのであり、そんな中、出逢った男に心変わりをしても責められるものでもない。
それでも、うさぎはまだ付き合ってくれている。あれだけ長い間放置したのにもかかわらず。
だが、訊かずにはいられなかった。本当は誰を好きなのかを。
お互い、未来のために気持ちを偽ってきたのではないか。
決められた未来を歩むために生きていたのではないか。
そう生きることが二人の運命だとしても、自分達の意思でこれからの未来を創るべきなんじゃないのか。
そう思ったとき、脳裏に一抹の不安がよぎる。
―もし、それぞれの道を進んでしまったときにちびうさはどうなる…?
ちびうさは未来から来た衛とうさぎの子供であり、二人が別れた場合もちろんその存在はなくなる。
それだけが気がかりだった。もう気持ちは決まっていたのだから。
うさぎへの気持ちは、恋じゃない。これは、ずっと前から気づいていた。
確かに大切だし可愛いと思う。だが、家族とか、そういう当たり前の存在で恋ではない。
多分、うさぎもおなじことを考えている。星野と出逢ってからうさぎは変わった。
衛にはその時のことはわからないけれどなんとなく感じていたのだろう。
うさぎは星野に昔の衛の面影を見ていることに。
無意識かもしれない、自覚などしてないと思う。
だがうさぎは昔の衛を見ていた。今より過去を。
疑問が確信に変わったとき、衛は別れを切り出した。
――うさこ、別れよう
星野が地球を発ち、少ししてからのことだった。

先のことをなにも考えなかったわけじゃない。
このまま偽り続けて一生愛することも出来た。
別れを考えていながらずっと躊躇ってきた。
これは、ある人の後押しがあったからこその行動だった。
そのある人とは、ちびうさの友人、ほたる――
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