小説

□01
2ページ/5ページ

「祐希、待たせてごめん!」

私の相方で、唯一の友達で親友の夢羽が帰ってきた。
茶色に染められたふんわりとしている髪、強気そうなつり目には自信に満ちている。
少しではあるがメイクもしているみたいだ。
夢羽は私の隣りにドカッと座り、大袈裟に溜め息をつく。
足を組んで、腕も組んで、相当ご立腹なようだ。

「どうだったの?」

「なにが?」

「告白されたんじゃないの?」

「ああ、あれ」

夢羽は組んでいた腕を解くと、身振り手振り込みでその事についての一部始終を話し始めた。

「あいつ、今回で何回目だと思う? 三回目よ、三回目!
小中高と懲りないんだから…。『どうしても諦めきれなくて…』だって!
こっちは最初から眼中に無いっての!」

相手への悪口が八割を占めたので、こちらの方で編集させていただいた。
どうしても夢羽のこの世とは思えない悪口が聞きたいと言う方は、私まで。
いないだろうけど。

「そういえばさ、」

「…なに?」

「さっきまであんた誰かと話してたでしょ」

「うん…」

私は気を落ち着かせるために一口、水筒に入っているお茶を飲んだ。
夢羽が視線のみで早く話せ早く話せと急かして来る。

「先輩に会ってね…」

私と彼との物語は、私が夢羽に先輩の話を話した今、まさにこの瞬間から静かに、それでいて激しく幕引きされたと言っても良いだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ