小説 silent line -虚空の軌跡-

□第ニ話『故郷との別れ』
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「普通は名前を聞かれた時、『呼ばれてた』なんていわねぇからな。この戦争で親御さんや友達もみんな亡くしたんだろ?すまなかったな…。」

あの倉庫の中で見た彼の違和感はこれだったのかもしれない。

だとしても彼が自分に対し謝る程の事をしたとは思えず、何か別の理由があるのではないかと感じたが、そのことは頭の片隅に置いた。「一緒にいくよ。何処にでもね。」


それを聞くとブラムスはスロットルを押し込み進路を東へと取る。

もう住んでいた町は見えなかったが、それでもアリシアの方角を名残を惜しむように見ていた。


自分は母国『アリシア』を後にした。


この時の選択が間違っていたとは思わない。
だが後々、この選択が自分の、そして世界の運命を左右させる鍵になろうとは、まだ知る由も無かった。
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