その他

□嘘の代償
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薔薇とあなたは一心同体
命の重さを知るがいい


一度死にかけたから、あの薔薇をちぎられたときの痛みは誰よりも理解しているつもりよ。
だからこそ、イヴの薔薇を取り返さないといけない。
こんな小さい子にあんな思いをさせちゃいけないわ。

そう決心して私の薔薇と交換してイヴの薔薇を取り返した。
覚悟はしてた。
あの子は、あの赤い服の女たちと同じ存在。
だから、そんな子に薔薇を渡したらどうなるかなんて目に見えてる。

でも、それでも私は嘘をついた。


「大丈夫よイヴ。あなたは悪くないわ。
 すぐに取り返せば済む事だし、気にしないで」

既に激痛に襲われていたのに、私は嘘の笑顔を作った。



あぁ、もう。
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの?

正直そう叫びたかった。


痛い痛い。誰か助けて。

そう助けを乞いたかった。


でも、それも出来ない。
出来るだけ声を出さないように。イヴに心配かけないように我慢する。


大人の私がしっかりしなきゃ、イヴが不安になっちゃう。


最悪、この子だけでもここから出してあげたい。



その思いだけが私を動かしていた。



そうだと自分に嘘をついていた。










本当は早くこの地獄から出たかった。

この痛みから解放されたかった。



痛い。苦しい。

次第に息をするのも辛くなってきた。

自然と足が止まってしまう。

身体が麻痺したかのように動けない。



あぁ、これは嘘をついた罰なのね…?

最初から心のどこかで感じていた。
ここから出ることは出来ないって。

でも、それでも私は自分に嘘をついて、みんなでここから出られるって思い続けてた。

結局無理みたいだけどね…。



だったらせめて…最後にもう一つだけ嘘をつかせて。

人生で最後の嘘。


「大丈夫、少し休んだらすぐ追いかけるから…。
先に行ってちょうだい、イヴ…。」


こんな見え透いた嘘でも貴女は信じてくれるのね。

本当に、良い子なのね…。



これは嘘じゃないわ。

貴女はとっても良い子。


嘘まみれな私を信じてくれた、とても純粋で汚れのない良い子。










嘘の中から見つけた本心は、
空気を読まない酷い物だった。






もっと貴女と一緒に居たかった。
















壁にもたれかかって目を瞑る直前、誰かが私の前で立っているのが見えたような気がした。




「…馬鹿な男ね」





目の前の誰かは、そう呟いた。









 

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