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あだななワンドロ企画様より
「禍津」「星空」(2016/07/16開催)



「足立さん、肩車して!」
夏の日の夜。(堂島さんの留守中に)堂島さんの家にお邪魔していたら、彼が料理をしている間、菜々子ちゃんと外を散歩することになっていた。
明かりの少ない田舎道を危ないからって理由だけで手を繋ぎながら歩いていると、菜々子ちゃんがそう言ってきたのだ。
7歳って言ったって女の子でしょ?傍から見たら怪しいヤツに見えないか?って一瞬考えたが、ここで断るのも面倒くさい。しっかり掴まっててねと声をかけてから、彼女を肩車する。
子供だと思ってたけど、想像よりは重たいようで、一瞬だけふらつきそうになったが、遠くから殺気のような威圧感を感じ、なんとか踏ん張った。
「だ、大丈夫?足立さん。」
「へ、平気平気。誰かを肩車するなんて初めてだから、乗り心地良くないかもしれないけど……どう?」
「うん、すっごく高いよ!」
人の肩の上ではしゃぐ彼女に曖昧な相槌を返し、慎重にバランスをとりながら再び歩きはじめた。
「ねぇ、足立さん。あれが天の川?」
彼女がそう言って暗い夜空を指さした。
都会にいた頃は絶対に見えることは無かった星空。
雲一つない夜空に、大きな川がかかっていた。
「そうだね、天の川だ。」
「じゃあ、織姫様と彦星様もこのお星様の中にいるのかな?」
「そうだろうね」
2人で夜空を見上げて少しだけ足を止める。
なんてことは無い、ただの散歩の途中で話した記憶。

ただ、それだけのはずだ。

見上げてもあの日見た夜空は見れない。赤と黒だけが広がる壊れた世界。
もう誰も僕を止める奴はいない。
これは彼が選んだ結末。信じたいものを信じた結果、彼女は死んでしまった。
もうすぐこの世界は閉じてしまうだろう。
全て無かったことになり、全てが最初からやり直される。
……あの日見た星空は再びあの日に輝くだろう。
だけど、おそらく、僕らがあの星空を見上げる事は二度とないだろう。
記憶は全て閉じてゆくこの時間へ置いていく。
その為には……

僕は、あの日見た空を思いながら静かに目を閉じ……自らの顎下に銃口をあてがった。


自然と笑みがこぼれたような気がした。



織姫様、今 会いに行くよ。






END
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