その他

□気持ち悪い
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ただの興味本位だった。

別に彼を特別視していたわけでも、

まして、彼が好きなわけでもない。


ただ、気持ち悪いガキだ。としか思っていなかった。












何が起きたのか、理解するまで少しの時間がかかった。

僕はソファーに座っていたはずだ。

それがいつの間にか倒れている。

いや、正確に言うと押し倒されていた。


部屋の電気が逆光して、彼の表情が見えない。

"俺の本心は、あなたが好きで仕方がないんです。ずっと、ずっと、こうしたかった。"

近づいてくる彼の顔。

押しのければいいのに、半ばパニックになった僕は何も出来なかった。

…断じて、言い訳ではない。

ただ、おかしな事に嫌悪感は無かった。

本当におかしな話だ。



唇が触れ、隙間を割くようにしたが入り込んできた時、ようやっと貞操の危機に頭が気づき、彼を思いっきり突き飛ばした。

はずだった。

しかし、彼の体はビクともせず、片をつかんで引きはがそうとしても動くことはなかった。

むしろ、キスはより一層深い物へと変わっていき、僕はただ、喘ぐように制止の声を上げるしかなかった。

出会ってから2ヶ月。10歳も年の離れた子供に良いようにされて、ただただ息を荒らげるしかない自分に、心のどこかで嫌になり始めていた。


なぜ、必死に抵抗をしないのか。と。



そんな心に僕は言い訳をするように言い聞かせる。


別に僕の意志じゃあない。彼が離してくれないだけだ。

ならば、彼の気が済むまで相手をするしかないだろう。と。

それに、こんなガキに良いようにされているだけではかなり癪に触る。

ここは大人の本気を見せてやらなきゃ。と、こんな時にどうでも言い闘争心なんて出しちゃって、

彼の肩を押さえていた両手を彼の首の後ろで組み、さっきから僕の舌で遊んでいる彼の舌を絡め取り、深いキスをする。

あぁ、やめておけばいいのに。負けるのが嫌だからって。

"キスっていうのはね、こうするんだよ"

なんて、得意げに笑ったりする。

――気持ち悪い

そんな経験もろくにないくせに、大人ぶりたいからって、
主導権が欲しいからって、慣れている風に振る舞う自分が。

――気持ち悪い

僕に熱をぶつけてもなお治まることなく、まるで貪るように、僕の体にすがりついてくる彼が。

――気持ち悪い




 あぁ、なんて気持ち悪いんだ。





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