拝啓、私の主様

□第一章 人間屋
1ページ/5ページ





ザワザワ…    




  ザワザワ…





声が、聞こえる。


一人ではなくもっと大勢の…




?「――ゃ!!……てぇ!!」


女の、悲鳴…?


しかしあの場に女は私とクロームしかいなかったはず。


私じゃなければ消去法でクロームだが、アイツがあんな金切り声を上げるだろうか…。




「…ぅ」


目を開けてみる。


薄暗い部屋。


目の前の柵にココが牢屋だと認識する。




(復讐者-ヴィンディチェ-の牢獄か?)


いや、それにしては狭過ぎる。


第一ココの絶望や恐怖のニオイはあそことは少し違う。


入れられる理由も私にはない。




カシャン...


(手枷?それに首輪も…)


力を封じる為の物か?




魔火-バル-



予想とは裏腹に指先からぼぅっと炎が上がる。


どうやらコレは…私の行動を制限する為だけの物らしい。




(私を"黒姫"と知らない連中か、あるいは拘束しなくても勝てるという自信家か…)


どちらにせよ、状況を把握しなくては思うように動けない。




(そういえばあの時、)


私は死んだはずじゃ…―――


体を触って確かめてみるが、穴が開いている形跡はない。


心臓も正常に機能している。




(何故?)


今日はやけに謎の多い日だ。


ただの銃弾で命を落とし、牢獄のような場所で目を覚まして…。




「厄日、だな」


もう溜め息しか出ない。



*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ