拝啓、私の主様
□第一章 人間屋
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ザワザワ…
ザワザワ…
声が、聞こえる。
一人ではなくもっと大勢の…
?「――ゃ!!……てぇ!!」
女の、悲鳴…?
しかしあの場に女は私とクロームしかいなかったはず。
私じゃなければ消去法でクロームだが、アイツがあんな金切り声を上げるだろうか…。
「…ぅ」
目を開けてみる。
薄暗い部屋。
目の前の柵にココが牢屋だと認識する。
(復讐者-ヴィンディチェ-の牢獄か?)
いや、それにしては狭過ぎる。
第一ココの絶望や恐怖のニオイはあそことは少し違う。
入れられる理由も私にはない。
カシャン...
(手枷?それに首輪も…)
力を封じる為の物か?
「魔火-バル-
」
予想とは裏腹に指先からぼぅっと炎が上がる。
どうやらコレは…私の行動を制限する為だけの物らしい。
(私を"黒姫"と知らない連中か、あるいは拘束しなくても勝てるという自信家か…)
どちらにせよ、状況を把握しなくては思うように動けない。
(そういえばあの時、)
私は死んだはずじゃ…―――
体を触って確かめてみるが、穴が開いている形跡はない。
心臓も正常に機能している。
(何故?)
今日はやけに謎の多い日だ。
ただの銃弾で命を落とし、牢獄のような場所で目を覚まして…。
「厄日、だな」
もう溜め息しか出ない。
*