婆裟羅

□懐かしい距離
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身体を病魔に蝕まれ、余命三年と宣告されてから早いもので、もう三度目の春が来ていた。


奇跡的に以前の記憶を取り戻した半兵衛は、以前と同じように私に接してくれた。


愛おしげに名前を呼ばれ『愛している』と囁かれた時、その嬉しさで泣き出してしまった事は記憶に新しい。




「綺麗だな、半兵衛」


私は今、病院に咲く桜を見る為に病室から半兵衛を連れ出して桜の木の下まで来ていた。




半「……」


記憶は戻っても体の自由は奪われ今では車椅子での移動が不可欠となった半兵衛。


プライドの高いコイツの事だ。


その心中はあまり穏やかではないだろう。




半「……」


それでも桜を眺めている時の顔は心成しか穏やかに見えた。




(半兵衛が見惚れるのも、分かる気がするな…)


ココの桜は、私が見てきたどの桜よりも美しい。


それこそ……どう表現していいか分からないくらいに。


半兵衛はきっとその美しさを心の何処かで覚えていたから、病室でずっと眺めていたんだろう。


…まぁ、あくまで憶測なのだが。
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