博物館

□拍手文 7
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焦らすのも―――
それが相手の手管とわかっているのに。






「気持ちイイ?」

「聞く、なっ…バカ」

「ヤダ」


何を子供じみたことを、と脳裏を掠めた思考。ベッドの中ではことのほか《雄》に変わる相手を揺らぐ眼差しで睨みつけた。

別の意味で眉間の皺が深くなったことを正確に読み取って、質の悪い笑みが口元を飾る。


「だって久しぶり、だし」


嘘を言うな、嘘を!と叫ぶ代わりに唇から洩れたのは、吐息に彩られた喘ぎで。


「ちゃんと感じてるのか、俺に教えてよ」


……末期だ。

そんなことは、とうに知っていたのに。



**************



宮城が修学旅行へ行ったのは週の頭の話だ。
しばらく会えなくなるからと、出発当日の朝方まで貪るように、抱かれた。
おかげで唯でさえ出席日数の危うい数学を遅刻してしまった。歯噛みして怒鳴りつけたい相手は遥か空の上で。

たかが3泊4日の修学旅行に振替休日を挟んだだけなのに…

シャワーを浴びたばかりで、まだ湿った肌を掠める指先の乾いた感触は、ざわざわと三井の神経を制す。
覚え込まされた快楽を享受することに慣れきった躯は、決定的な刺激を与えられずにじわじわと、引き延ばされる終着を渇望して。


「や…ぁっみ…や」

「教えてくれなきゃ、わかんねーよ」


睦言を囁くのと同じ唇が、耳朶を甘噛みする。無慈悲な宣告さえも、半ば期待へとすり替える貪欲な躯。



片手程しか、離れていない。そう頭は理解しているのに。呆れるくらい飢えていたのかと自嘲してみても、触れる愛しい温もりの記憶以上に顕著な反応に、宮城は笑みを深くする。


「まだまだ、かな…俺も」


思わず一人ごちれば。
どんな言葉よりも雄弁な、縋る彩を浮かべた瞳とかち合う。


「宮城…っ」


伸ばされた腕を取り、右手の甲に恭しく口付けを落とす。
噛みつきたくなるほど綺麗に反らされた滑らかな喉笛と、シャープな線を描く鎖骨。浮き上がった顎の傷跡に目が眩んで、それ以上の思考を放棄する。
後はもう、歯止めが効かなかった。












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