記念碑

□present of love
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相手に触れられていることは分かる。

相手の体温だって感じられる。

痛覚だって普通にあるはずだ。

当然、相手を愛おしいと思う感情だって備わっている。

自慰ならば達することも可能だった。なのに、相手に触れられてもそこまでに至らない。

なぜか行為に快楽を見いだせずにいる。

最初はもう少し感覚があったような気がする。

だが今思えばあれは痛覚だったのかもしれない…それも今となってはどうでもいいこと。

愛しい相手とする行為に、快楽を見いだせない―――

そんな自分の身体が疎ましくて……

《壊したい》と、思うのだ。



**************



「あ…っ、み、宮城っ」


彼の首に両手を回してすがりつく。汗ばんだ身体に抱き締められるのは予想外に嫌じゃなかった。
むしろ自分よりも高ぶっている宮城の身体が愛しくて、三井は宮城の首筋に顔をすり寄せて彼の汗の匂いを嗅いだ。

彼の汗の匂いに、欲情した。

そっと自身に触れるとそれによって身体は反応するが、彼によって与えられる快楽とは異なる為だろうか、まるで行為の最中に自慰をしているような気分に陥る。
後ろめたい気持ちを振り払うように宮城の腰に両脚を絡め、首に回した腕に力を込めた。
強く抱きついた三井をどう解釈したのか、抜き差しを繰り返していた宮城の動きが早さを増す。


「……っ、あ、あぁ」


動きに合わせて三井は喉をそらせて喘ぎ声を漏らす。


「俺…もうっ」

「…あぁ…っ、俺も…」


何が「俺も」だ。と冷めた意識が囁く。わざと声に出す喘ぎ声は演技にしか過ぎない。
宮城に抱かれる度に感じたフリをする。いつだったか、仲間内で見たビデオそのままに。
あの時は甲高い声を上げる姿にうっすら興醒めしていたが、今となってはあの時見ておいて良かったとさえ思う。
あの女優もまさか自分の「演技」をこんな風に「参考」にされているとは思ってもいないだろうけれど。


「あっ、みや、ぎっ…中に…」


中に出されるのが好きだ。快楽を感じない身体だから。相手の快楽の証を体内で受け止める、その瞬間だけが三井の快楽と言えた。

後から溢れてくる感触が。

こんな身体でも愛されていると実感する感じが。

三井の精神的な快楽につながっている。


きっと宮城は気付いている。三井の演技に…三井が必死に隠そうと足掻いていることに…

宮城との最中に自分で扱いて出したことがあった。その時重ねられた宮城の手に止め処もなく泣きたくなって、あれ以来その行為も止めた。

三井は宮城との行為で達しない。男は快楽の証が明らかになる。だから、三井の不感症に宮城が気付かない筈がなかった。


快楽がなんだ、と三井は思う。

宮城に抱かれると言葉に出来ないくらい身体も心も満たされ、幸せになる。これこそが快楽だと言っていいじゃないかと思う。
それは言い訳だと誰かが囁くのを、聞こえないように耳も心も塞いで。

快楽を感じない身体…

ただ、宮城が離れていくのが怖かった。
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