記念碑

□僕がどんなに君を好きか、君は知らない
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「いい加減にしろ!」

シャツは完全にはだけきって、着ている意味を持たず腕に絡む。弾け飛んだ釦。ズボンのベルトは外され、寛げられた前からは下着すら覗いている。そんな状況なのに、強気な姿勢を崩そうともせずにきつく容赦なく憎悪を込めて睨みつけてくる。

ツキン、と心の奥が軋んで痛むのを気付かないふりでやり過ごした。

「ンなこと言っていーの?」

動じた風も無く、さらりと彼の嫌う笑みを浮かべて。

「なん…」

「だってソコ尖ってんじゃん」

ジロジロと不躾な視線を胸の一点に向ける。ねっとりと舐るような卑猥な目線にじんわりと湧き上がる何かが三井の背筋を駆け抜ける。

「ねぇ…乳首勃ってきたよ?俺に見られて感じてンじゃん」

「ちがっ」

とっさに否定の言葉が口をついて出る。追い詰められていく感覚に肌が粟立つ。

「うそつき…ホントは触られてーんだろ?」

ニヤリと含みを持たせ、淫猥に笑う。
この笑顔が出て無事に済んだ試しは、無い。
両手を伸ばして完全に勃ち上がってしまった乳首を乱暴に摘み上げる。

「痛っ!」

グウッと摘んだ後、優しく円を描くようにこねて緩急をつけて指先を摺り合わせる。
痛くて、気持ちいい…そういう快感があるのだと教え込んだ指先が執拗に弄ぶ。

「あっ」

教え込まれた快楽に甘い声を零し始めた三井の顔を意味深に見下ろして、完全に勃ち上がった乳首をいきなり乱暴に捻り上げた。

「あぁっ」

一際大きな声を上げて反射的に仰け反ると、宮城の手に更に押し付ける形になる。咄嗟に上げてしまった声に潜む媚態を宮城は気付いてしまったろうか?
嫌がっていたくせに過剰なほどに反応を返してしまうのが悔しくて、ぎりぎりと唇を噛み声を抑えようとする。

どうして…こんな、ことに…

「ヤラシイよなあ…乱暴にされてンのにさ。痛いのが気持ち良いんだ?アンタもしかしてマゾ?」

酷薄な笑みと言葉で詰る。

痛いから気持ち良いんじゃない…お前にされるからいいんだ…

だから何をされても構わない。そう思って羞恥に震えながら宮城を受け入れてきた。筈なのに…

つと宮城が頭を下げて赤く腫れた三井の乳首を唇で挟んで吸い上げた。指先での愛撫とは異なる優しさに満ちた舌先の繊細な動きに三井の口から嬌声が零れ落ちる。
柔らかな舌全体で縦横に慈しむと芯を持って跳ね返してくる。音を立てて嘗め回しながらクッと噛んだ。

「―――――ッ!」

「へえ?」

「み…見る、な」

余韻に震えながら体を捩る三井を宮城は強引に開いた。

「乳首だけでイッちゃった?」

指を伸ばして白濁した液体を溢れさせている三井のソレを下から上と撫でると、あっという間に宮城の指が白く濡れた。
恥ずかしさに頬を染めて瞳を潤ませながら、それでも気丈に宮城を睨みつける三井の眼差しを真っ向から受け止めていた宮城が、ふと微笑した。
見せ付けるように濡れた指先を口に含んでみせる。

「濃いね?シてねえの?」


じんわりと滲んだ涙のせいで視界が揺れるのを振り払うように三井は首を振る。



体を繋ぐことなんて宮城としかしていない―
宮城を拒んだあの日から、自分で触れることすらしていない―

あの日、イヤだと怒鳴りつけてそれでも強引に押し倒そうとしてくる宮城を突き飛ばした。
傷付いた表情を隠すこともしないままに部屋から出て行った宮城の顔が頭から離れない。
たまたま機嫌が悪かった上に、まるで三井の体だけで構わないと言わんばかりの宮城の求め方がイヤだった。
たった一度の拒絶で本当に宮城が触れてこなくなるなんて思いもしなかった。
ちょっと邪険にすると慌てて縋って抱きついてくる。そんな宮城が嬉しくて、愛しくて、もっともっとそばに来て欲しい―ただそれだけだった。たわいもない意地悪。どんなに三井が拒んでみせても求めてくれると…

三井は、それが宮城の心を傷付けていたことに気がついていなかった。



かわいいからってちょっと甘やかしちゃったね?それがよくなかったンかな?だからこんなに逆らうようになったンだね?

何をされても離れていかないように――

あんまり大事にしてたから、アンタが俺の物だってことまで忘れてつけあがっちまうんだね?

「イッたばっかでまだ物欲しそうじゃね?アンタの」

冷たい一瞥で見下ろす先に雫を漏らし続け硬度を保ったままのモノがある。
つるりと丸い先端を指で撫でると、まとわりついたものを三井の目の前に翳した。
悔しさと情けなさ。快感に震える自身を軽蔑し、込み上げる羞恥に涙が零れる。それでも高まる淫蕩な快楽への抑えきれない期待。万華鏡のような幾重にも彩られる三井の瞳の色に宮城は目を細めた。

「触ってあげようか?」

いつもならとっくに触れて、口に含んでくれてすらいたのに今は蔑むような視線だけ。

けれど…それでも…

「…み、やぎ」

見つめられるだけで再び角度を増し溢れてくる。
うっすらと笑みを浮かべて宮城は三井へと手を伸ばす。その腕を待ちきれないと三井が手を伸ばして縋りつき、ぎゅっと抱きついた…甘えるように、きつく強く。

大事なことだからさ。ちゃんと言い聞かせないとね?忘れないようにさ。

「俺のやり方でね」

残酷な宣告は睦言の甘さを帯びて闇に溶けていく。











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