記念碑

□あなたの気持ちがサプライズ
1ページ/5ページ

明後日はリョータの誕生日だから。サプライズでちょっとしたプレゼントを用意したいから。

部活の休憩時間に、珍しく安田がそばに寄ってきてカンパを募ってきた。

「誕生日?宮城が?」

バカみたいな三井の問いかけも意に介した様子も見せずにコクリと頷く。

「一応、部のみんなからって。」

後でリョータに分からないように箱回すんで、お願い出来ますか?

小声で言われて、なんとなくつられるように小さく

「おう」

そう返事した。





誕生日…そっか、誕生日か。うん、まあアイツも誕生日くらいあるよな。…当たり前か。


体育館の片隅で、多分カンパを募る安田や潮崎達の様子がバレないようになんだろう。彩子が珍しく宮城に構っている。

はしゃぎやがって…あのバカ

理由は推測出来るけど。
でもムカつく。

だって…





「…なんか怒ってます?」

「別に」

「(怒ってンじゃん)…眉間にシワ寄ってるよ?」

「寄ってねーよっ」

「イヤ、アンタ自分の顔見えないでしょーが」

「っ見えなくたってわかる!」

何だ、ソレ…


胸の中だけでツッコむ。
こういう態度の時にうかつな発言をすると、面倒くさくなるのは付き合う前から知っている。

「そーいえばサ」


こういう時は、話を変えるのが一番だ。ちょうど聞きたいこともあるし。


「ヤスと何、話してたの?」

「グッ」

ヘンな声を上げて、あからさまに慌てふためく。

イヤもう…ホントわかりやすいよな…
そこがカワイイんだけど。

ヘラリと頬が緩みそうになるのを、グッと堪えてワザと不機嫌そうに

「言えないっての?」

冷たく聞こえるように問う。

「何にもっ!何にも話してねーよっ」

…ヘェ〜。あーそう。そーゆー態度?いくら俺でも、ムカついちゃうよ?

「そっ」

あ、俺今日、用事あるんで。






チャプン、と水面が揺れる。

怒って、た。間違いなく。手も振らないで、クルリと背中を向けて走って行った。


どうしよう…


ずっと自問ばかりしてるけど、答えが見つからない。


だって…だって内緒だって言われたんだ。サプライズだって。

それに、自分だって。お前だってひどい。あんな笑顔、絶対俺に見せないのに。
やっぱり彩子の方がイイんだろ。なんだよ…俺が悪いのかよ。


好きだって、言ったのに。

三井サンが、好きだから…


そう、言ってくれたのに。



悔しいけど涙が出る。後から後から涙があふれて止まらない。

しゃくりあげる声が、風呂場に響くから。

息をとめて湯船に潜った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ