記念碑
□甘く、溺れて
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霞がかかったかのようにぼんやりとした意識の中で、ふと眉をひそめた。
(枕が、硬い…?)
むずがるように身を捩る三井の耳に、微かに闇を揺らす小さく低い笑い声が届く。
優しく髪を梳く手がそっと耳殻に降りてきた。
「大丈夫?」
いたわる宮城の言葉に、三井は自分がセックスの最中に意識を飛ばしたことに気付いた。
枕だと思っていたのは、宮城の二の腕だったのだ。
三井は羞恥のあまり、手繰り寄せた毛布の中に顔を埋めた。
「ゴメンね?ちっと抑えがきかなくって」
「…言うな、バカ」
情けない…毛布の中で三井は唇を噛み締めた。
宮城の熱い唇と指先が生み出す快楽に、三井の自分が年上だという矜持は、何の意味も持たなくなってしまう。
一度煽られてしまえば、あっという間に快楽に震えるだけになる三井の躯を宮城は上手に追い詰める。
昨夜の記憶は宮城の腕の中でぷつりと途切れ、何度イカされたのかすら思い出せない。
いつもこうして流される…三井は涙がこぼれないようにキツく目を閉じた。
「おい」
「何?」
「今、何時だ?」
「今?……えっと1時まわった、かな?」
なんでもないかのようにサラリと答える宮城が腹立たしい。
…1時をまわったということは今日は7月31日。宮城の誕生日だ。
プレゼントを贈りたいなんて、どうして思ってしまったのか。
らしくない振る舞いに苦い笑いがこみ上げて、詰めた息をそっと吐いた。
帰宅してから、宮城にあげるものをつらつら考えてみたが、何が欲しいのか皆目見当がつかない。いっそ本人に聞いた方が手っ取り早いとばかりに宮城の家に押しかけた。
「なンかありました?」
別れてから2時間と経ってなかった、とその時気付いた。
「悪ィかよ」
「全然。むしろ嬉しーし」
風呂上がりの濡れた髪から滴る雫を、首にかけたタオルで拭きながら笑顔で迎え入れられて、ドアを閉めた途端に口付けられる。
貪るような激しい口付けに、呼吸さえも奪われてしまえば、三井に選択の余地すら無かった。