記念碑

□7つのこと
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ひとつ…いつも体育館に足を踏み入れる瞬間、祈るように目を伏せる

ふたつ…左膝にトレードマークの赤いサポーターをしてから、必ず左足からバッシュを履く

みっつ…気分がいいと、時々鼻歌を歌ってる


ものすごくキレイなフォームでシュートを放つ手が、意外にもスベスベしてたのを知ったのは部活が始まる前のこと。


「三井先輩、シュート見てもらえませんか?」


初めて三井先輩を見たのは、三井先輩が仲間を引き連れて、土足で体育館に来た時。怖くて怖くて。みんな血を流して…これからどうなってしまうんだろうって体の震えが止まらなかったんだ。


「おう!」


まぶしい笑顔で、返事をしてくれた。脇で石井が、俺もいいッスか!?なんて横入りして来た上に、普段は黙ってる佐々岡まで来たからムカついたけど。


「お前、腕曲がってンだよ」


そう言って、後ろからシュートフォームを直してくれる。
初めて触れられた手が、ほんのり熱くてドキドキした。


「な?わかるか?」


背中に三井先輩の体温…心臓が跳ね上がる。
教えてもらったフォームを崩さないように放ったシュートは、リングを掠ることなく入った。


よっつ…ボールとネットが奏でる音に、耳をすませるような仕草


「ナイッシュ!今の、スゲェ良かったぜ」


ポンポンとリズミカルに頭を撫でられた。
三井先輩が大切にしているバスケットボールになったみたいで嬉しくなる。


「ありがとうございます!!」

「三井先輩!自分もお願いします!!」


石井が割り込んできた。


「おー」


視線がそれた…仕方ないから、脇に避ける。
気がついたら桜木くんまでやって来て


「ミッチー!天才に教えさせてやるぞ」


なんて言い出して…みんなが三井先輩を取り囲む。流川くんまで


「1on1してもらえねーッスか」


って…どんどん三井先輩と離される。
どっちが三井先輩を取るか!なんて桜木くんと流川くんが喧嘩しだして…あ、


いつつ…親指の腹で顎の傷痕を撫でてる
困った時の、三井先輩の癖


「桜木、パス練終わってンのか?」

「飽きた」

「素人なんだから、引っ込んでろよ」

「うるせー!!バカ流川!ミッチーはこの俺に教えたいんだぞっ」

「てゆーか次僕なんだけど…」


石井があそこまで食い下がるのって、ちょっと珍しい。
赤木キャプテンも木暮先輩もまだ来てない。2年生の先輩達もまだだから、誰にも収拾つけられそうにない。
三井先輩がふう…と溜め息をついて、僕に向かって肩をすくめてみせた。


「どーでもいーけど、俺ァ1人しかいねーンだからよ」


ギャンギャン騒いでるみんなに暢気そうに三井先輩が声をかける。


「いっぺんに全部なんてできねーぞ?」


水飲んでくる間に決めとけよ、なんて手を振りながら三井先輩が去っていったので、余計大騒ぎになってしまった。








「居残りすっから片付けいーぞ」


三井先輩が解散後に声をかけてくれた。本当は僕も残って練習したいんだ…でも情けないけど、もう家に帰るだけの体力しか残ってないからいつも我慢する。
三井先輩、体力無いってよく先輩達がからかってるけど、やっぱり僕なんかとは全然違う。
僕もバスケが大好きだけど、三井先輩にはかなわない。


むっつ…バスケが大好きだってみんなが知ってる…それからみんなが三井先輩を大好きなこと


僕も早く上手くなりたい。一度でいいから、三井先輩と一緒にコートに立って、僕からのパスでシュートを決める三井先輩を見てみたい。

だからお願いです。もっともっと沢山、僕の練習見て下さい。
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