記念碑
□7つのこと
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「生意気なンだよ、1年のクセに!!」
今、コイツの頭にヤカンとか乗せたら、沸騰すんのかなぁ…と三井は思う。
ガンッと罪の無いゴミ箱が蹴飛ばされる。
「大体、アンタもアンタだよっ!何1年なんかに触らせてンだよ!!」
触らせ…って。シュー練見てただけだって。そりゃフォーム直してやったけど…と、言い訳も面倒くさい。
だってこんな風になった宮城に何を言っても無駄だから。
サッサと1年帰しといて正解だよな。やっぱ俺って頭いいんだわ…
そんなことをうっかり考えてボーっとしていたら、ひどく物騒な気配がして。
「聞いてンの!?」
ものすごい目つきで睨まれた。
なんで、ンな怒るんだ?
「聞いてっけど…」
「けど、何だよ」
「なんで怒ってンのか、わかんねぇ」
正直に答えたら、宮城は頭を抱えて座り込んだ。
「アンタ、時々マジで殴りたい」
セリフの内容は聞き捨てならないが、声がめちゃくちゃ落ち込んでるのはわかった。
部活の前に水飲みに行って戻ってきたら、体育館の中が非常に険悪なムードだった。
桜木と流川はいつものことだから気にもならない。だけど宮城と桑田って組み合わせは初めて見た。
でも赤木と木暮が来て、すぐに部活が始まったんだよな。
ずっと宮城の機嫌が悪いから。
せっかくバスケやってても全然面白くない。
「あのさぁ…」
「…」
「桑田と何かあったのか?」
多分、今一番言っちゃマズいんだろうけど…でも宮城とこんな風にイヤなムードで居る方が、絶対ヤなんだよな。
「………アンタ独り占めするなって言われた」
「は?なんだ、それ」
「『僕だって三井先輩のこと、見てます』なんてズケズケ言いやがったンだよ!」
…ゴメン、意味わかんねぇ。どういう意味よ、ソレ?
ギリギリ歯噛みしながら唸るような声で
「アンタは『みんなの三井先輩』なンだってさっ!!」
吐き捨てるように吠えられても…つか、ソレ俺が悪いのか?
やっと宮城と2人っきりになったのに…
ここ最近、やたら自分の周りに人が集まるせいでなかなか宮城と2人きりになるのが難しい。
頼られたり、慕われたり…とにかく構われるのが好きな三井にとって現状は好ましいといっていい。だが、それによって宮城の機嫌が悪くなるのは…
「【無くて七癖あって四十八癖】って知ってっか?」
「はぁ?」
「テメーじゃ気づかねぇ癖がどーとか…そういうヤツ」
「ことわざ?」
「あ〜確か…でよ、桑田は6つ見つけたって言ったんだろ?」
何が言いたいのか、全然わかんねぇんだろうな。すげーマヌケな顔してやがる。
当てこすりみたいに、俺のクセをこれだけ見つけました、なんて…
桑田も余計なこと言うよな。大きなお世話だっつの。
「7つ目、わかんねーと思う」
「?」
「お前しか、わかんねぇンだけど?」
バァカ。わかんねぇの?しょうがねぇなぁ…
普段、やたらと手慣れた風に俺にアレコレするくせに…
時々、三井がびっくりするくらいどうでもいいようなことで、むくれる宮城が実は『カワイくてツボ』だなんてのは、絶対バラセない三井だけの秘密だ。
ふてくされて、床に座り込んだままの宮城の真正面に回り込んで…
軽い音を立ててキスした。
「!!」
「コレも『クセ』に入れなきゃなんねーだろ?」
毎日、シてんだしよ
アンタ最高!!とか何とか叫んで飛びついてきた宮城がキスしてくる……って、舌入れてきやがった!
でもいっか…コイツの機嫌がなおってうれしーから。
それにコイツ、マジで気持ちいいキスしてくれるし。
他のヤツと、したことないから比べらんねーけど。
つか比べるつもり、ねーけど。
桑田にゃ悪ィけど、『みんなの』ってムリ。
とっくの昔に『売約済』だから
終