至宝館
□早乙女一志様より二万打記念リクエストSS
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耐え切れなくなった他の部員たちは、普段の倍のスピードで準備を終え、部屋を後にする。すると人が少なくなってきたのに気付いているのかいないのか、二人は静かに互いの距離を縮めていった。熱っぽい瞳で三井を見つめる宮城と、その熱に浮かされたように微かに眉を寄せた悩ましげな表情で宮城を見つめ返す三井。完全に世界は二人のためモードだ。
こんな所で二人の世界作ってんじゃねぇぞ。ほんっっとに何考えてんだこの色ボケ刈り上げ野郎。ここでそれ以上三井さんになんかしてみろ。そのちゃらちゃらしたピアス、引きちぎってやる。
温厚で平和主義な安田が非常に物騒な事を考えるまでに三井に密着した宮城が、目の前にある瑞々しい唇目掛けて顔を寄せた。
その時。
「おっし、行こうぜミッチー! リョーちんも早く着替えろよ。置いてくぞ!」
着替えを終えた花道が、二人の間に漂う空気を毛程も察知せず寄ってきて、宮城の背をばしんと叩いた。
二人ははっと我に帰ったように手と身体を離した。宮城は急ぎ練習着を手に取り、三井は少々慌てたように濡れた服を片付けながら花道に答える。
「おう、行くか。宮城も行くぞ」
「うぃっす」
花道を先頭に三人連れ立って部室を後にする。その際、花道の見えない所で宮城と三井が顔を見合わせ、しょうがないな、とでも言うように笑い合ったのを、安田は当然の権利として見ないフリをした。
皆の足音が遠ざかると、一人部屋に残された安田は、身が萎み切ってしまいそうなくらい大きな息をついた。
このひたすら面倒臭い事態から逃げ出したい。真剣に願う安田だったが、しばしの瞑目の後、顔を上げた。ドアを開け、体育館へと大きく一歩足を踏み出す。覚悟を決め苦難へと歩を進める彼は、さながら戦士の形相であった。
僕の、安息の地はどこだ。
三年生が抜けた今、最後の湘北の良心である気の毒な安田の苦悩はまだまだ続くのであった。
20000hitリク頂いた、「ナチュラルにいちゃつくリョ三と湘北バスケ部」です。
かむいのみ様のみお持ち帰り可です。リクエストありがとうございました!
(101013)