献芹館
□誕生日に想うこと
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「ホントはお前、絡んでなかったんだろ?」
ベッドに仰向けに寝転んだまま、器用に足先を伸ばして足元に丸まった毛布を手繰り寄せようとしている。
「何の話?」
三井サンが動けない原因であるオレは優しく毛布を掛けてやった。
「いっちゃん最初の誕生日。部室でさ」
「あぁ…アレね」
思わず苦笑いしてしまったオレを、三井サンは顔まで引き上げた毛布からチラリと目だけを覗かせて見上げてくる。
「どーなんだよ」
「だってアンタの誕生日だったなんて知らねかったもん」
「ちぇ、騙しやがって…」
毛布の下で唇を尖らせてるに違いない。苦笑いしたまま毛布ごと三井サンを抱き締めた。グェとか何とか可愛くない声が聞こえたが、知らんぷりでギューギュー体重を掛けてしがみついたら三井サンの体からゆっくりと力が抜けてくるのがわかった。
「いーじゃん、いーじゃん。勘違いだってさ」
「勘違いじゃねーよ、ダマシだろ」
「そんなもー…騙されたオカゲでこんな素敵な彼氏とラブラブなったんだからイーじゃん」
「居ねーよ、『素敵な彼氏』とか!バカかっ」
「ったく!いくつンなってもスナオじゃねぇのな!」
埋もれた毛布を剥いで三井サンの顔を覗き込むと、アノ時みたいな真っ赤な顔した三井サンが、やっぱりアノ時みたいな潤んだ目でオレを見上げている。
「わ、悪かったなっスナオでも何でもなくてよ!!」
そんな風に憎まれ口を言いながら、潤んだ目が不安そうに瞬いて…
今なら、分かる――
ホントは初めっからアンタに惚れちゃってたんだ。
ただキッカケが掴めないでイラついてたのを、バカなオレはアンタが嫌いだって思い込んでたんだ。
人から差し出されたキッカケなんかでアンタと仲直りなんてしたくなかったんだ。
スナオじゃねーのは、オレも同じだよな。
「みやぎ?」
黙り込んだオレに、泣きそうに聞こえる三井サンの声…
右の目蓋に口付けたら、左の目からポロリと零れ落ちた雫を舌先で掬って、目蓋にキス。それから細く通った鼻筋を唇で辿って、小さく震える唇を合わせた。ン、と応える唇をそっと甘噛みして促すとそろそろと薄く開かれる。
出来るだけ優しくキスしたいけど、三井サンの唇は例えようがないくらい柔らかくて気持ちイイ。だんだんガマン出来なくなって本格的に貪り始めたオレの首に三井サンの腕が絡まってきた。
ホントはもうちょい、インターバルを置いて上げたかったけど…ゴメンね?オレもまだまだ若いからさぁ〜
なんて言い訳も出来ない状態だけど、きっとその辺は察しているに違いない。
「……ば、か」
甘く掠れた声が聞こえて、腕の中の体が熱くなるのを感じた。
日付が変わった瞬間に渡そうと思ったプレゼントは、まだジーンズのポケットの中にある。
知り合ってから7回目の、付き合い始めてから6回目の、三井サンの誕生日。
なんて言って渡そうか?そんなことを思いながら、オレはあの日釘付けになった首筋に所有の印を刻んだ。
終