main.

□檸檬の。
1ページ/35ページ



いつからだろう?

小さいときはずっと一緒だったのに


今は挨拶ぐらいしか交わさなくなった


いつもと同じ時刻に家を出る

なるべくアイツに会わないように、早い時間に。

隣の家には見向きもせずに、すたすたと。

エレベーターをぽちっと押してため息をつく



後ろで誰かの気配がして
まさかとは思った時


「・・・・・はよ、真」

どんぴしゃり。

振り返ると
俺より明らかに背が高い男がいた

その男は、俺の


俺のたった1人の幼なじみ。

会いたくないのに。


「おはよ」

俺は目も合わさずに呟く
短く返す言葉には何の重みもない。


綺麗に整った顔をしたソイツは
まるで似合わないような髪の色と型で
昔の面影なんて、これっぽっちも感じさせないようだった


それに比べて俺は
身長だって高くないし低くもない
髪だって触らないし
気にもしない

この対照的な俺達が
むかしむかしに幼なじみという無二の関係だったなんて
誰も思わないだろう

「・・・・・・・・・」

そこでタイミングよくエレベーターが開く

「今日は早いんだね、夕貴」


と、いつも何の話題も出て来ないから


それに耐えられない俺は
いつも沈黙を破る役目だ
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ