戦慄の絆

□戦慄の絆 09
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シュウside



合同練習から2日たった。




カイに聞いても誰に聞いてもシュウヤの行方を知らなかった




唯一、聞いてないのは白竜だけ。




僕は、白竜の元へ向かった。




白竜はグラウンドで、練習をしていた。




「白竜!!」




白竜は、いったん練習をやめ、こちらに向かってきた




「なんだ」




「シュウヤを知らない?」




「シュウヤなら、実験室に行ったのを知らないのか?」




「あ、実験室って何?」




「……実験室は人体実験を行う場所だ。記憶や能力、レベルなど全てを調べられる。そして、いつしか、ゴッドエデンを去っていく」




「………」




「知らなかったのか?」




「うん」




「実験室に行ったものは、人格が変わり果てる」




「ふーん…そうなんだ」




「兄弟なのに心配じゃないのか?」




「心配はしてるよ。でも、心配じゃない。」




「?」




「あ…白竜。この島に伝わる、古い話を知ってる?」




「いや。」




「この、島にはね、今で言う、サッカーに似た競技があったんだ。その競技は村長を決めるにも、これからどうするとか、大切なことを決めるのは、全部サッカーに似た競技で決めたんだ。」



「………」




「この島じゃ、サッカーが人の価値を決める手段だったんだよ。」




「…今のサッカーと、一緒だな。」




「それとね、この島は、白竜達が世界とは違う特別な風習があってね。」




「さっきの、サッカーに似た競技のことか?」




「そうだね。それにまつわる、哀しい話だよ。この島に古くから伝わる、凄く哀しい話」




「昔はたくさんの野菜や果物が採れる、豊かな島だったんだ。だけど、何年かに一度、干魃に見舞われて作物が採れなくなることがあってね…。そう言う時、村では神様の怒りだと信じられていた。雨を降らせてもらうために、その怒りを鎮める儀式をするのが習わしだったんだ。」




「その、儀式とは何なんだ」




「生け贄だよ」




「!!!生け贄だと!?」




「うん。若い娘が一人、神様に捧げられて海に流されるんだ。そうすれば村は救われると信じられてきたし、実際、その儀式は日照りが続くたびに続けられてたんだよ。」




白竜は絶句していた。空が、夜の訪れを告げようとしていた




「昔は、当たり前のこと。誰も疑問を抱いていなかった。ある年、また日照りが続いて干魃になると、村を救う為に誰を生け贄にするか、こいつでで決めることになった。」




シュウは、近くにあった、サッカーボールを弾ませた




「人の、命がかかってるじゃないか」




「そういう時代だった、としか言いようがないよね…村は二つのグループにわかれていて、サッカーをやって負けた方のグループにいる少女を、生け贄にする事になったんだ。片方のグループで生け贄候補になった少女には双子の兄がいた」




「兄達は、妹を助けるために、必死にサッカーを練習した。だけど、兄弟の兄の方は弟が練習していても、勝てないとわかっていたから、兄は対戦チームのメンバーに自分に有利なプレイをさせることを約束させた。こっそりお礼を渡してね」




「まさか、お金を!?」




「うん。勝負をお金で買ったんだよ。でもそれは、村人にばれてしまった」




「妹はどうなったんだ」




「試合は無効にされ、妹は生け贄にされた。兄は何もかも奪われて、村を追放された。もちろん、弟も…」




「弟は、懸命に頑張っていたのに、兄はそれを無に変えた。追放された兄弟は、村からかなり離れた、山奥で暮らしていた。弟は兄を恨むことなく、二人で生活を始めた」




「………」




「だけど、ある日、兄が目を覚ますと弟がいなくなっていた。最初は、何か採りに行ったのかな、と兄は思っていた。だけど、何日も何週間も弟は帰ってこなかった。弟は、兄を捨て出て行ったのだと兄は思いました。村人や弟を憎み、兄は死んでいった…。」





「この島は、サッカーに呪われている……なんてね。ごめんね。暗い話で」




「いや…。」




「寮に戻ろう。もう、暗いしね」




「ああ…。」





白竜side



シュウから、聞いた話が、頭から離れない




どこか、腑に落ちない部分があった。




このせいだと、思い、寮に帰るシュウの後を追った




























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