短編

□ゼロ
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〜ぽこた視点〜


「はあぁ・・・・」


いつものように仕事をこなし、
いつものように電車に乗る。

今日は少しだけすいているからなんとか
席につくことが出来た。

時計を確認すると、10時過ぎ。

この労働基準法を無視した職務時間、
どうにかならないかなぁ。

まぁもっと忙しい人もいることは
間違いないんだけれど。


そんなことをウダウダ考えていた。
下車する駅まで、まだ何駅もある。

家に音楽プレイヤーを置いてきて
いるのは今朝の通勤時に把握済みだ。


疲れてるし時間もあるし、
少し眠ろうかなぁ。

ボンヤリとしてきた意識の中、電車に
いろんな人が乗車しているのを見ていた。

気づけば、俺は意識を手放して
眠りについていた。



********************

〜蛇足視点〜


今日は久々に家を出た。

最近「ニコニコ動画」 なるものに自分の
歌を投稿し始めた。

仕事柄、機械系には強い。


そろそろ新しいマイクを買おうと思い、
電気街に赴いた訳だが。

マイクはネットで調べたりして今日は
勧められていたマイクを見つけ、
それを購入。

だが思った以上に混んでいて帰宅時間が
こんなにも遅くなってしまった。


「はあぁ・・・」

やはり人混みは苦手だ。
これだから外に出るのは嫌なんだ。

なんて鬱になりながら電車に乗り込む。

人の波に飲み込まれながらも何とか座席に座ることが出来た。

隣の若い男性が爆睡している。
恐らく会社帰りなんだろう。


電車が線路の上を行く間、俺は向かい側の窓の外をボーッと眺めていた。

そのうちどんどん人が降りて行き、
車両は一気にスカスカになった。

しばらくすると。



ガクンッ。



・・・隣の人が俺の肩にもたれ掛かってきた。

だがいっこうに起きる気配ナシ。

とりあえず、頭を元の位置に戻す。
だがまたしばらくすると。


ガクンッ。



・・・・なんかもうどうでもいいか。


俺はそのまま放置。

またボーッと向かい側の窓の外を
眺めていた。



*****************



ガッタンッ!!!

「うわっ」


突然電車が止まり、車両が大きく揺れた。
その拍子、俺は眠気は吹っ飛び目が覚めた。


そこで俺は隣の人にもたれ掛かっていた
ことに気づいた。

「あ・・・すみませんっ!!!」

「いえ・・・」

「あの・・・どうして電車止まったんですか?」

「なんか人が飛び込んだとか」

「そうですか・・・」


この人・・・ハーフなのか?

彫りが深くて、鼻が高くて・・・・
とても綺麗な顔をしている。

それに声も落ち着いた低音で・・・
何だか引き込まれる。



「あのー・・・何か?」

「いえ、別に・・・・」

それから2、3分か経ってから、
電車は動き出した。

駅に着くと、隣の人が座席を立った。

「あ、さっきはすいませんでした!!」

「いや、本当に気にしてないんで」


そう言ってその人は微笑んで
電車を降りて行った。



**********************



電車を降り、乗り換えをする為に
向かいのホームへと向かう。

・・・・・あの人、疲れてたみたいだな。


というか、あの声どこかで聴いたことが
あるんだよなぁ。

Gacktさんには声は似てたけど
顔は全然似ていなかったし。

いや、それは不細工という訳でなく
わりと可愛らしい顔立ちで・・・・


それにしてもあの声どこかで・・・・・・

なんてことをウダウダ考えていると
ホームに電車が滑り込んできた。

俺はハッとして電車に乗り込んだ。


座席に座り、そういえば、と思って
買ったマイクを確認してみる。


「・・・・・あ」


レシート、ない。
さっき電車の中で落としたのかな?


ま、いっか。



********************



「あ。」

さっきの人レシート忘れてる。

何となく手に取ってみた。

「マイク・・・・・?」


あの人・・・
何の仕事をしている人だったんだろう。

こんな平日の夜に私服でいた訳だし。

歌を歌っている方?
もしかして・・・・・・・・・・・・・・・・・


『まもなく◯◯駅です』


「あ」

俺はレシートを握り締め、ポケットに
押し込んで電車を降りた。





その後、二人がとある場所で再び出会う
というのはまた別の話。





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これは随分前から温めていた話です(^ω^)
割りと筆が進みましたようふん。

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