短編

□0.5
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「・・・・・・くそ」

俺は防音室から出て、冷蔵庫から出した
お茶を口に含んだ。


今日は久々に新曲を録音していた。
この曲は他の歌い手もよく歌っていて
俺自身も好きな曲だった。


だが、他の歌い手が歌っている曲だけ
あって、歌に個性を出すのがとても難しく
録音は足踏み状態となっていた。


防音室へ戻り、椅子に腰かけてもう一度
原曲を聞いてみる。


「ここが難しいんだよなぁ」

歌い手が歌手等と違うこと、それは自分の
オリジナルの曲を歌うのではなく、元々
ボーカロイド等が歌っている「既存の曲」を
「自分なりに歌う」ということ。

そこでいかに自分を表現し、聴いてくれる
人にどう感じ取って貰うかが肝である。


だがその一番肝心な部分で煮詰まっている。

スランプ、とまで呼べる程まだ活動はして
いないが、これが俗にいうスランプという
ものなのだろう。


「・・・・・やーめた」

俺はブラウザを開いて、ニコ動を徘徊する。

そこで、一人の歌い手の歌に辿り着く。

「あ、」

この人もあの曲を歌っていたのか。

「ぽこた」という歌い手は、元はGacktの
声真似をして歌っていたらしいが、今は
ボカロの歌を歌っていることが多い。

この人は、確かにGacktに似ているんだけど
Gacktとはどこかが違う。

それが「個性」というものなのだろうか。


俺は瞬く間にぽこたの歌に聞き入っていた。

それからまた原曲を聴いて、を繰り返し、
俺の胸は「歌いたい」という気持ちで溢れていた。


録音を始めてから2、3回目。

さっきまでの気持ちはどこへ行ったのかと
いうほどスムーズに録音は終わった。

あとは知り合いにMixを頼むだけだ。

俺はブラウザを閉じる前に、ニコ動で
「ぽこた」と検索した。

前々から何曲かはぽこたの曲は聴いていてが
あまり深くまで聴いたことはなかった。


この機会だし、と検索して、何曲か
聴くうちに俺はぽこたの歌の虜となった。



それからしばらく経ち、ぽこたが新曲を
上げたというから聴きにいっていた。

すると、近々ライブを行うということが
決まっていた。


・・・・・・・この日程なら、何とかなるかな?

そうして俺はライブに参戦することとなり、ぽこたと会うことになった。
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