短編

□そう上手くはいかない
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「・・・・・・・・ねえ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ねえってば!!」

「もーなにー?」

「なに、じゃないでしょう!!この格好って
めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど!!!」

「・・・似合ってるよ」

「若干間を置かないで!!それと全然嬉しく
ないんだけど!!!」


俺は今にも踏んでしまいそうな長い裾を
持ち上げた。

そう、俺が今着ているのは。



純白のウエディングドレス。


勿論、ウエディングドレスなんて
いくら俺でも自分から着ようとは思わない。

朝目覚めたらこの姿で鏡の前にいたのだ。

どのような経緯でこのような無惨な姿に
なったのかは見当もつかない。


ただ、俺のすぐ傍にはパリッとした
タキシードを着ている蛇足さんが凛々しく
佇んでいた。

恐らく、いや間違いなくお茶目なこの永遠の33歳の仕業に決まっている。


だが本人は頑なに否定し続けている。
そんなアホな。


「殿じゃなかったら誰が着せたって
言うんですか!!!」

「だから知らないってー」

さっきからこの会話の繰り返しで
一向に進歩ナシ。

「もー!!!とにかく脱ぎますからねっ!!!」

そう言って脱ごうとすると、蛇足さんは
俺の腕を掴み、いつにも増して真剣な顔で
『脱がないでくれ』と言う。


その掛け合いを何度も繰り返し、お陰で
俺は未だにウエディングドレスを脱げずに
いる。

「あー重たい・・・動きづらい・・・・・」

「我慢我慢」

「殿はタキシードだから辛くないでしょー」

「でもぽこた、本当に似合ってるよ」


真顔で見つめられ、甘い声で言われたもんだから
俺は言い返すことが出来なかった。

顔が一気に熱くなるのを感じる。


「ぷっ・・・・・顔、真っ赤」

そう言って笑いながら俺に近づき、優しい
手つきで俺の頬に触れた。

いつもとは違う蛇足さんの言動に、俺は
ただただドギマギしていた。


「何だろう、ぽこただからかそれ着てても
本当に違和感ないんだよ。むしろしっくり
きてるから」

そんなこと言われても、と言い返す暇も
与えてくれず、蛇足さんは俺に優しく口づけた。

「ぽこた・・・確かに俺たちは男同士でこれから先も辛いことばっかだと思う。俺は俺なりにしか出来ないけど、ぽこたを絶対に幸せにするよ。だから・・・」





ピピピピピピピッ―――――――――!!!!


「うわああああっ!!!」

俺は勢いよく体を起こした。
自分はパジャマでベッドの上にいた。


夢・・・・・だったのか・・・・・・・・。

自分がいつもと同じ格好でいることに対する安堵と、蛇足さんのその先の言葉を聞けなかったもどかしさを
感じながらベッドから這い出た。


きっと、昨日久々に蛇足さんと会ったから
こんなとんでもない夢をみたのだろう。

まったく、俺ってやつは・・・。


そう自分で思いながらもつい癖で殿から
連絡が入ってないか携帯を確認する。



案の定、着信もメールもゼロ。

蛇足さんはマメな人じゃないしな。
そう思いつつもさっきの夢とのギャップに
地味に凹む。


そして無性に殿に会いたくなる。



気づけば指は無意識に蛇足さんの携帯番号をプッシュしていた。


プルルルル・・・・・・・ガチャ。

「あ、もしもし!!」

『・・・・ぽこた?』

「あのさ、蛇足さん!!!今日おれ・・・・」

『ごめん今から寝るから切るわ』


ブツッ・・・・・ツー、ツー・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・このバカ殿おおおおっ!!!」




やはり、現実は夢の様には上手くいかない。





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ほんの少しご無沙汰してましたー。

この作品はグリ友のゆぅさんとメールして
いて、無性に書きたくなった作品。

製作期間、なんと一時間足らずwww
あっという間に書けてしまった(笑)


あー他の作品もこれぐらいのペースで
書けたらいいのに。



追伸・蛇足さんの新曲の戯言スピーカーが
神曲すぐる件について。

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